研究課題
肺炎レンサ球菌や口腔内レンサ球菌であるStreptococcus sanguinisはミティス群レンサ球菌に属する.肺炎球菌は肺炎や髄膜炎等の主な起因菌であり,薬剤耐性が問題になっている.一方,S. sanguinisをはじめとする近縁種の口腔内細菌は口腔内で歯牙へ早期に定着し,プラーク形成に寄与する.しかし,感染性心内膜炎からの分離頻度が高いことから,口腔内を離れ血流に入ると病原性を発揮すると考えられる.S. sanguinisは,他の口腔内レンサ球菌と比較して,多様な細胞壁架橋型の表層タンパク質を産生するため,菌体表層タンパク質の機能が血流における菌体の生存や心組織定着に繋がると考えられる.本申請研究では,ミティス群レンサ球菌の全身伝播時における上皮細胞と免疫細胞の相互作用と免疫回避や組織定着に関与する細菌因子を探索し,新規の病原性発揮機構の解明を目的とした. 本年度では,菌株の収集を継続すると共に,これまでに作製したS. sanguinisの変異株ライブラリーの表現型解析を行った.また,S. sanguinisが産生する線毛について,組換えタンパク質の作製と結晶化を行った.肺炎球菌については,培養温度の変化が菌体表層タンパク質の発現に及ぼす影響を検討するとともに,血中での生存能とヒト細胞への菌体付着率に関する解析を行った.また,マウス感染実験により,培養温度の変化が及ぼす病原性への影響を検討した.その結果,培養温度の違いにより,これらの表現型や病原性は変化することが明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
口腔内レンサ球菌の新規病原因子候補の解析を行うとともに,肺炎球菌を用いた解析から環境温度が病原性に与える影響を明らかにし,概ね順調に研究は進展していると考えられる.
口腔と血液由来の菌株の収集と,これまでに得られた変異株の表現型解析を継続するとともに,組換えタンパク質を用いた生化学解析を行う.肺炎レンサ球菌と口腔内レンサ球菌の解析を並行して行い,病原性に関わる新たな機構を探索する.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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