研究課題/領域番号 |
17H04370
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
内藤 真理子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (20244072)
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研究分担者 |
坂井 詠子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10176612)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯周病原菌 / 9型分泌機構 / Tn-Seq |
研究実績の概要 |
T9SSに関わる遺伝子を網羅的に探索し、その機能を解析するために以下の実験を行った。(1)効率的にP. gingivalisの高密度のTn挿入変異体ライブラリーを作製した。Tnとして標的配列がATという配列によるバイアスが低いMariner transposonと、P. gingivlisへのTn導入は従来用いられていた接合伝達より簡便な電気穿孔法を選択した。さらに菌の培養条件を検討することで、安定的に効率的にTn挿入変異体ライブラリーを作成する事が出来た。結果、5.5万個のTn挿入変異体ライブラリーを得た。(2) T9SS の機能不全は本菌の特長である血液寒天培地上での黒色色素産生性が失われることで検出した。(1)で作成したライブラリーの1.6%に黒色色素産生性の欠如が認められた。これらの黒色色素非産生株を分離、ゲノムDNAからNested semi Random PCRによりTn挿入位置のゲノム断片を増幅、塩基配列を決定することで702株の黒色色素非産生株のTn挿入位置決定した。これによりT9SSに関わる遺伝子を56個同定した。(3)同定した遺伝子のうち21個はこれまでにT9SSとの関連が報告されていないものであった。またこれとは別にT9SSの分泌装置を構成するタンパク質との結合が報告されているタンパク質の遺伝子が1個同定された。これらの遺伝子について、各遺伝子に特異的な遺伝子欠損株を作製し、これらのT9SS機能への関与を検討した。結果、後者の遺伝子1種の変異株のみ黒色色素非産生を示し、T9SSの機能に関与することを明らかにすることができた。また既知のT9SS関連遺伝子におけるTnの挿入位置から、それぞれのタンパク質の機能に重要な領域を推測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に用いた菌の培養条件を検討することにより、効率的にP. gingivalisの高密度のTn挿入変異体ライブラリーを作製することができ、さらにライブラリーから得られたT9SS機能変異株におけるTn挿入位置をゲノムDNAからのNested semi Random PCRにより決定できた。得られた結果から、これまでにT9SSの機能との関連が示されてない遺伝子22個についてそれぞれの遺伝子特異的変異株を作製、T9SS機能への関与を新たに一つの遺伝子で明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 新たに発見したT9SSに関わるタンパク質の抗体を作製する。またはmycタグ付きの形でP. gingivalisに発現させる。H29年度の研究で発見した新規のT9SSに関わる遺伝子の解析に用いるために抗体を作製する。目的遺伝子にHisタグをつけた遺伝子を構築する。この遺伝子を大腸菌発現用pET22もしくはpET15ベクターに挿入する。得られたプラスミドを発現用大腸菌BL21に導入し、IPTG誘導下でHisタグ付きのリコンビナントタンパク質を発現させる。発現タンパク質はHisタグアフィニティカラムを用いて精製する。精製したリコンビナントタンパク質をウサギに免疫、抗血清からポリクローナル抗体を得る。 以上の実験でも特異性のある抗体が作製できなかった場合、今後の解析のためにmycタグ付きの形で、P. gingivalis菌体に発現させる。目的遺伝子はオペロンに含まれていることから、開始コドンの直上にP. gingivalis での転写活性が高いPorphyromonas gulaeのカタラーゼ遺伝子のプロモーター配列を挿入した遺伝子断片を作製、タンパク質発現用プラスミドを得る。これのプラスミドを接合伝達にて大腸菌S17-1株から目的遺伝子の欠損株に導入する。目的遺伝子の発現は菌体の破砕液に対して抗Mycタグモノクローナル抗体を用い、ウェスタンブロットにて確認する。 (2) 作製した抗体、タグ発現株を用いて、見出したタンパク質の局在、既知のT9SSタンパク質との相互作用を調べる。さらにblue native gelによりT9SS分泌機構タンパク質が形成する高分子構造体の形成への影響を検討する。
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