研究課題
T9SSに関わる遺伝子を網羅的に探索し、その機能を解析するために以下の実験を行った。昨年までの研究で効率的にP. gingivalisのMariner transposonを用いた高密度の5.5万個のTn挿入変異体ライブラリーを作製、T9SS の機能不全(血液寒天培地上での黒色色素産生性が喪失)株を分離、702株のTn挿入位置決定していた。本年度は決定した挿入位置に相当する56個遺伝子の解析を行った。(1)同定した遺伝子のうち21個はこれまでにT9SSとの関連が報告されていないものであった。個々の遺伝子変異株を作製、T9SSとの関連を確認する。(2)56個の遺伝子のうち(1)を除いたものを精査した。そこでT9SSの分泌装置タンパク質との結合は報告されているが、T9SS機能への関与が不明な遺伝子を1つ(PGN_0297)検出した。この遺伝子の変異株、相補株を作製、T9SS機能への関与を検討する。(3)T9SSが輸送するタンパク質(T9SS輸送タンパク質)に特徴的なドメイン構造の役割を検討する。 (1)の21個の遺伝子はT9SSとは関連性がないことを確認した。また(2)の結果からPGN_0297遺伝子変異株では、血液寒天培地上での黒色色素産生性、赤血球凝集活性、ジンジパイン産生の全てが喪失すること、さらに遺伝子の相補株で回復することを明らかにした。この結果からPGN_0297がT9SSの必須遺伝子であることを初めて明らかにでき、この遺伝子をporGと命名した。また(3)の実験からT9SS輸送タンパク質の内部のIg-likeドメインがT9SS輸送における輸送タンパクの安定性に重要であることを明らかにした。これまでの結果を論文にまとめ学術雑誌に受理された。
2: おおむね順調に進展している
効率的に作成できたP. gingivalisの高密度のTn挿入変異体ライブラリーの解析結果から得られたT9SS関連遺伝子候補、56個遺伝子の解析を行うことができた。これらの候補遺伝子の中の21個がT9SSに関連しないことが確認できた。さらに新たなT9SSの必須遺伝子を1つ、porG遺伝子を同定することができた。またT9SS輸送タンパク質の解析から内部のIg-likeドメインがこのタンパク質の安定性に欠かせないことを明らかにできた。
昨年までの研究で33個の遺伝子がT9SSに必須であることを確認した。これらの局在は多くが同定されているが、個々の構成分子間の相互作用についてはわかってないものが多い。そこで今後は下記の実験でT9SSの分泌装置の構成タンパク質間の相互作用を明らかにすることを目指す。33個のT9SS必須遺伝子のうち15個が内膜、ペリプラズム、外膜に存在する分泌装置の構成タンパク質と推測されている。これらの中でP. gingivalisにおいてタンパク質の相互作用が不明な遺伝子のうち3個についての解析を行う。(1)標的遺伝子の変異株作成を行う。染色体上の目的遺伝子をcepA遺伝子に置換する。(2)標的遺伝子内にtag配列を挿入、N末端にはP. gingivalsi内で安定的に発現するカタラーゼ遺伝子のプロモーター配列を連結する。作成した遺伝子断片を大腸菌-Bacteroides属用のshuttle plasmidに挿入、電気穿孔法で(1)で作成した変異株に導入する。P. gingivalsiにて標的遺伝子の相補が成功、かつtag付きの発現蛋白質がtag抗体で検出できる株を得る。TagとしてはHisタグ、Streptタグを用いる。また挿入位置はN末端とC末端それぞれで作成する。(3)(2)で得られた株から菌体破砕液を調整、膜画分を超遠心にて分画する。さらに界面活性剤で可溶化したあと発現させたtagを用いてaffinity精製を行う。精製した画分を電気泳動にて展開、検出したすべてのタンパク質バンドを質量分析にて同定する。これにより目的タンパク質と相互作用するタンパク質を同定する。affinity精製により高次構造体が得られた場合は電子顕微鏡による観察にてT9SSの高次構造解析を試みる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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