研究課題/領域番号 |
17H04373
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (70184760)
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研究分担者 |
中村 史朗 昭和大学, 歯学部, 准教授 (60384187)
中山 希世美 昭和大学, 歯学部, 講師 (00433798)
望月 文子 昭和大学, 歯学部, 講師 (10453648)
田中 謙二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (30329700)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セロトニン / 咀嚼 / 光遺伝学 / 三叉神経運動ニューロン / 樹状突起 / 5-HT2A受容体 / GluN2Aサブユニット / Srcキナーゼ |
研究実績の概要 |
セロトニン神経系は多様な脳機能に関わることが知られ、睡眠時や咀嚼時の閉口筋活動に影響する可能性があるが、セロトニン神経系がいつ、どのように咀嚼筋活動に影響するかは解明が困難であった。そこで平成29年度は、まず、理研より購入するRBRC05846とRBRC05454のマウスを交配し、チャネルロドプシン2(ChR2)をセロトニン神経特異的に発現させたTph2-ChR2トランスジェニック(TG)マウスを作製し、セロトニン神経を刺激した時の、安静時および咀嚼時の咀嚼筋活動を解析した。LED光源を用い700 mAの強度で1秒間、安静時あるいは咀嚼時に青色光を照射したところ、顎運動の誘発はできなかったが、探索行動様行動を誘発することができた。 また、三叉神経運動核を含んだ脳幹スライス標本を作製し、咬筋運動ニューロンの膜電をパッチクランプ法にて記録し、あらかじめ記録電極に封入した蛍光色素(Alexa Fluor 594)を拡散させることで樹状突起を可視化した。灌流投与したケージドグルタミン酸から2光子励起により樹状突起の特定の部位でグルタミン酸を解離させることで興奮性のシナプス入力を発生させ、微小電極に充填したセロトニンを圧駆動により局所に微量投与したときのニューロンの応答(グルタミン酸応答)を解析した。その結果、グルタミン酸応答の発生部位から60μm以内でセロトニンを投与すると、グルタミン酸応答が増強されることが分かった。また、セロトニンによるグルタミン酸応答の増強には5-HT2A受容体の活性化に続く、Srcキナーゼの活性化でGluN2Aサブユニットを含むNMDA受容体の機能が増強することで生じることが明らかとなった。 動脈灌流標本を用いた光遺伝学実験については、口腔粘膜の電気刺激で咀嚼様運動の誘発を試みたが、安定して繰り返し誘発することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チャネルロドプシン2(ChR2)をセロトニン神経特異的に発現させたTph2-ChR2トランスジェニック(TG)マウスを作製し、セロトニン神経を刺激した時の、安静時および咀嚼時の咀嚼筋活動を解析したところ、探索行動様行動を誘発することができたものの、目的とする咀嚼運動を含めて顎運動の誘発はできなかった。 一方、2光子顕微鏡を用いたスライス実験から、グルタミン酸応答の発生部位から60μm以内でセロトニンを投与すると、5-HT2A受容体の活性化に続く、Srcキナーゼの活性化でGluN2Aサブユニットを含むNMDA受容体の機能が増強することで、グルタミン酸応答が増強されることが明らかとなった。 動脈灌流標本を用いた光遺伝学実験については、口腔粘膜の電気刺激で咀嚼様運動の誘発を試みたが、安定して繰り返し誘発することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
チャネルロドプシン2(ChR2)をセロトニン神経特異的に発現させたTph2-ChR2トランスジェニックマウスで顎運動を安定して起こすために、以下のことを試みる: 1) 光照射のプロトコルを700 mA 持続時間1秒の連続照射から、持続時間10 msec, 30 Hzのパルス状の光照射を1秒間行った後4秒休止し、これを10分間繰り返すパターンに切り替える。2) 現在は背側縫線核に光刺激を行っているが、尾側の大縫線核の刺激なども行う。3) Cre依存型のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いたChR2発現系を用いる。 平成29年の実験からセロトニンは、グルタミン酸応答を増強することが分かったが、閉口筋筋紡錘からなどの実際の感覚入力によるシナプス後電位がセロトニンでどのように変調を受けるか確かめる。 除脳ラット動脈灌流標本の咀嚼様顎運動誘発については、口腔粘膜の電気刺激の代わりに麻酔科の動物で良く用いられている脳幹の錐体路の電気刺激を試みる。
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