研究課題
チャネルロドプシン2(ChR2)をセロトニン神経特異的に発現させたTph2-ChR2トランスジェニック(TG)マウスを作製し、セロトニン神経の刺激によって、リズミカルな咀嚼筋活動を誘発する条件を探った。その結果、持続時間10 msec, 30 Hzのパルス状の光照射を1秒間行った後4秒休止し、これを10分間繰り返すパターンの光照射に切り替えたところ、照射直後から約5分間、10Hz前後のリズミカルな咬筋活動が、全ての個体(n = 4)で誘発された。10分間全く光照射をしない期間を挟んで、再度光照射を続けたところリズミカルな咬筋活動の発生確率は徐々に減少し、4回目の光照射ではリズミカルな咬筋活動が誘発できなくなった。また、三叉神経運動核を含んだ脳幹スライス標本を作製し、咬筋運動ニューロンの膜電をパッチクランプ法にて記録し、閉口筋筋紡錘からの一次求心性線維の電気刺激により咬筋運動ニューロンにシナプス後電位を誘発し、セロトニン投与の影響を調べた。その結果、シナプス前ニューロンの5-HT1B受容体の活性化によって、閉口筋筋紡錘からの一次求心性線維の刺激による興奮性シナプス後電位が抑制されることが明らかとなった。さらに除脳ラット動脈灌流標本の咀嚼様顎運動誘発については、吻尾的に顔面神経核から舌下神経核の間のレベルの巨細胞性網様核および傍巨細胞性網様核の連続電気刺激によって、さまざまなパターンのリズミカルな顎運動が誘発できることが明らかとなった。
3: やや遅れている
チャネルロドプシン2(ChR2)をセロトニン神経特異的に発現させたTph2-ChR2トランスジェニック(TG)マウスの光照射によるセロトニン神経刺激によって、意外なことにリズミカルな顎運動が誘発されることが明らかとなった。一方で、アーキロドプシンTP009 (ArchT)などを発現させたTGマウスを使ったセロトニン神経の抑制をまだ試みていない。また、脳幹で吻尾方向に広がるセロトニン神経の存在部位によって効果に違いがあるかも未解析である。除脳ラット動脈灌流標本における咀嚼様運動の誘発に成功し、従来知られていなかった様々な運動パターンが誘発されることが明らかとなった。一方、細胞内Ca2+シグナルの記録によってセロトニン神経の活動を直接解析することは行えていない。
チャネルロドプシン2(ChR2)をセロトニン神経特異的に発現させたTph2-ChR2トランスジェニックマウスに光照射を行うことで誘発されたリズミカルな顎運動について、自由行動下の動物のどのような時の運動に相当するか、どの部位のセロトニン神経の活動が重要なのか、脳幹のどの部位の神経回路に影響してリズミカルな顎運動を起こしているかなどを調べる。また、アーキロドプシンTP009 (ArchT)を発現させたTGマウスを使って、リズミカルな顎運動中にセロトニン神経を抑制し、その効果を調べる。除脳ラット動脈灌流標本に誘発された咀嚼様顎運動については、電気刺激を加えることで咀嚼様運動が誘発された巨細胞性網様核および傍巨細胞性網様核について、グルタミン酸などを同部位に微量注入することで同部のニューロンを刺激した場合、逆にイボテン酸注入などによって同部の神経細胞の破壊などを行い、これらの部位の神経細胞が活動して咀嚼様活動が誘発されているのかどうかを調べて基本的な性質を明らかにしたのち、セロトニン神経系の影響を解析する。
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