研究課題/領域番号 |
17H04374
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
溝口 利英 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (90329475)
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研究分担者 |
荒井 敦 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (00532772)
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20264252)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
細矢 明宏 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (70350824)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 象牙芽細胞 / 第三象牙質 / フェイトマッピング解析 / ジフテリア毒素 / 細胞の枯渇実験 |
研究実績の概要 |
露髄をともなう象牙質欠損におけるの修復過程では、歯髄幹細胞(DPSC)の象牙芽細胞への分化誘導は必須のイベントである。本申請研究では、遺伝子改変マウスを用いたフェイトマッピング解析により、DPSCを特定し、その象牙芽細胞への分化メカニズムの解明を目的とした。我々は、レプチン受容体(LepR)陽性細胞が歯髄幹細胞(DPSC)であると予想した。しかし、遺伝子改変マウスを用いた細胞系譜解析の結果、LepR陽性細胞はDPSCではないことが明らかになった。そこで、象牙芽細胞の細胞死によりDPSCから象牙芽細胞への分化が誘導されることを予想した。すなわち、象牙芽細胞の枯渇により象牙芽細胞分化が亢進する細胞画分をDSPCとして同定することを試みた。象牙芽細胞を特異的に枯渇する実験系を構築し、歯髄の観察を行った。I型コラーゲン(Col1)-Cre/flox-stop-flox-ジフテリア毒素受容体(DTR)マウスにジフテリア毒素(DT)を投与した結果、象牙芽細胞特異的な細胞死を誘導することに成功した。さらに、象牙芽細胞死にともない、新生象牙芽細胞が出現し、新たな象牙質の形成を促進することを見出した。現在、この過程における分子メカニズムの解析に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は歯髄組織におけるLepR陽性細胞の存在を確認しており、これがDPSCであると予想した。しかし、2017年度の解析から、LepR陽性細胞はDPSCではないことが示された。そこで、2018年度は、象牙芽細胞の枯渇により象牙芽細胞分化が亢進する細胞画分をDSPCとして同定することを試みた。その結果、象牙芽細胞死にともない、新生象牙芽細胞が出現し、新たな象牙質の形成を促進することを見出した。現在、以上の実験系を活用することにより、DPSCの同定および象牙細胞への分化メカニズムの解析に取り組んでいる。したがって、本研究計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)DPSCの同定:DPSCは象牙芽細胞に分化する過程で、細胞周期が亢進することが知られている。象牙芽細胞の枯渇時に、細胞周期が亢進する歯髄細胞画分をDPSCとして同定する。象牙芽細胞層の直下層(subodontoblastic layer)は、中間系フラメントの一種であるNestinが陽性であることが報告されている。また、a-平滑筋アクチン(a-SMA)は、歯髄の幹細胞であることが示唆されている。そこで、Nestinのプロモーターの制御下でGFPを発現するマウス(Nes-GFP)およびa-SMAの免疫染色で、それぞれの細胞画分を検出する。象牙芽細胞の枯渇後の各細胞画分およびそれ以外の画分における細胞周期の挙動を、Ki67免疫染色およびEdU標識実験により調べる。 (2)RNAseq解析:象牙芽細胞の枯渇後の歯髄組織からRNAを抽出し、RNAseqを行う。情報解析により、DPSCの象牙芽細胞分化にともない上昇する分子を探索し、DPSCの象牙芽細胞への分化メカニズムを解明する。 (3)歯髄組織のシングルセルレベルでのRNAseq解析:象牙芽細胞の枯渇後における歯髄間葉系細胞を回収し、シングルセルレベルでRNAseq解析行う。そのデータを基に、DPSCを同定し、象牙芽細胞分化過程の詳細を明らかにする。
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