研究課題/領域番号 |
17H04375
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三浦 雅彦 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10272600)
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研究分担者 |
戒田 篤志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40632097)
東 みゆき 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90255654)
渡部 徹郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00334235)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線感受性 |
研究実績の概要 |
本研究では、免疫系の修飾と放射線の併用により、腫瘍微小環境下で腫瘍細胞動態が大きく変動する結果、分割照射中の放射線感受性が影響を受けるとの仮説を立て、研究を進めている。これまで我々は、ヒト口腔がん細胞株にFucciを導入した細胞株を樹立して、ヌードマウス皮下移植モデルを用いて、免疫応答を考慮しない研究を進めてきた。本研究では、免疫チェックポイントが関与する反応を見るため、T細胞の機能が正常な状況において検討する必要がある。そこでC3Hマウスに自然発生し、口腔がんの免疫モデルとしても用いられるSCCVII細胞株にFucciシステムを導入した細胞株を樹立し、C3Hマウスに移植したが、腫瘍形性能が著しく低いことがわかり、Fucciを発現しないSCCVII細胞株を用いることとした。まず、放射線単独による腫瘍の増殖抑制ならびに低酸素分画の変化について、詳細に検討した。次に、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-L1抗体を併用したが、腫瘍増殖能、低酸素分画の変化の程度やその動態において、照射単独の場合と有意な差を認めなかった。抗PD-1抗体や抗CTLA4抗体に対する検討も行う予定である。また、照射の際、3種混合麻酔を用いて、体幹部への遮蔽を行うために鉛の箱に入れて後脚のみに照射を行うが、この麻酔によって血圧が低下し、低酸素状態を引き起こしている可能性が考えられることがわかり、対応策についても検討を行なっている。照射時に増殖期と静止期にあった細胞のいずれが再発に関与するかを調べるためのCreERT2-loxPシステムを用いたモデルの作製については、Gemininのユビキチン化制御部位をCreERT2に組み込み、そのプラスミドをSAS細胞に発現させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞周期の可視化を目的として導入したFucciシステムが、C3Hマウスの免疫を刺激するためか、SCCVII-Fucci細胞のC3Hマウス皮下での腫瘍増殖能が著しく低下することがわかった。そこで、やむなくFucciを発現しないSCCVII細胞に切り替えて実験を行なったが、3種混合麻酔による血圧低下が腫瘍内の低酸素状態を引き起こす可能性が出てきたため、その対応を検討している。抗PD-L1抗体を使った場合、放射線と併用しても増感効果や低酸素分画の変化の違いが得られなかったため、他の免疫チェックポイント阻害剤を用いた実験で検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、平成30年度の以下の計画を継続して実施する予定である。1)免疫チェックポイント阻害と放射線併用による腫瘍増殖抑制効果の検証;2)免疫チェックポイント阻害と放射線併用による増殖分画と静止期分画の組織学的、機能的解析;3)増殖期細胞と静止期細胞のCre-loxPを利用したラベリング法の開発と照射後の再発への寄与の検討。1)については、抗PD-L1抗体以外の抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体を用いて、放射線単独に比較して相乗的な腫瘍増殖効果を示す条件を検討する。昨年度、3種混合麻酔による低血圧が腫瘍に低酸素状態を行き起こす可能性が考えられたため、体幹部を遮蔽するために鉛の箱にマウスを入れて照射をする際、麻酔をしないで実施する方法についても検討を加える必要がある。2)については、1)で求められた条件下において、ピモニダゾールによる低酸素分画の変化を指標にして、放射線と免疫チェックポイント阻害剤との併用が腫瘍の酸素化を効率よく引き起こせるかどうかを検討する。より酸素化が効率よく起これば、次の照射の際により強い増感効果を引き起こせることになる。4)については、CreERT2にGemininのユビキチン化制御部位を組み込むことができ、それをSAS細胞に発現させることに成功したので、タモキシフェンによってその融合タンパクが核内に移行し、増殖分画において緑色から赤色に変化することをまずin vitro で確認する。それが確認できれば、固形腫瘍中でタモキシフェンによって増殖細胞が赤色に変化し、それ以外は緑色のままにあることを確認する。in vivoで期待された結果が得られなかった場合は、CreERT2を腫瘍内の血流を介して拡散するタモキシフェン濃度分布に従って組換えが起こるシステムを構築して実験を行う。
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