研究課題/領域番号 |
17H04380
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
興地 隆史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80204098)
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研究分担者 |
勝部 憲一 東都医療大学, ヒューマンケア学部, 教授 (20233760)
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
金子 友厚 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, その他 (70345297)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯学 / 歯内療法学 / 歯髄再生 |
研究実績の概要 |
申請者らは、生活断髄後の歯冠歯髄腔にラット骨髄間葉系幹細胞とポリ乳酸/Matrigelスキャホールドを移植する手法を用い、dentin bridgeを有する歯髄様組織が約2週間で再生可能なラット臼歯歯冠歯髄再生モデルを確立している。本研究課題は、同モデルが歯髄組織再生に関与する細胞・分子機構の経時的探索、あるいは効率的な歯髄再生技法の確立に有用であることに着目し、組織再生過程での幹細胞の分化や組織再生の様相を形態学的ならびに遺伝子・タンパク発現から解析し、組織再生の促進に主要な役割を演じる因子の同定を行うことを目的とする。 前年度は、ラット歯冠歯髄再生モデルを用いた再生歯髄組織の評価と再生促進因子の解析を目的として、以下の実験を実施した。すなわち、雌性Wistarラットを用い、歯髄を摘出し、コラゲナーゼ・ディスパーゼ混合溶液で歯髄細胞を分離・分散後、pericyteマーカーであるCD146(MCAM)抗体、さらにMAP1B抗体と反応させたダイナビーズ(Daynal社)を用いた磁気分離法により、CD146+MAP1B+歯髄幹細胞の分離を行った。コントロールとして市販のラット骨髄間葉系幹細胞も使用した。培養・増殖させた歯髄幹細胞をMatrigelに混濁させ、ゲル状スキャホールドを作成した。さらにこの幹細胞添加ゲル状スキャホールドをPLLAスキャホールド上に添加して三次元スキャホールドを作成した。ラット上顎第一臼歯歯冠歯髄歯髄腔に幹細胞添加三次元スキャホールドを埋入し、窩洞をmineral trioxide aggregateで封鎖した。移植期間は3, 7, 14, 28日とし、再生歯髄組織の免疫組織学的観察およびウェスタンブロット法を用いたタンパク発現解析を行った。さらに、歯髄より抽出したRNAを用いて、マイクロアレイによる特異的に発現が変量する遺伝子の絞り込みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年の研究計画と、おおむね同様に研究は遂行された。ラット上顎第一臼歯歯冠歯髄歯髄腔に再生した歯髄組織を検索対象として、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析、そして免疫組織化学的染色法を用い細胞や神経に発現する特異的タンパク発現、そしてウェスタンブロット法を用い、歯髄組織におけるタンパク発現の解析を行っている。 主な研究成果としては、再生歯髄組織の評価するために活性化マクロファージの動態を検索した。そして、スキャホールドが吸収され歯髄組織の再生が進行すると、M1マクロファージ(CD68陽性CCR7陽性)が減少するとともにM2マクロファージ(CD68陽性CD163陽性あるいはCD68陽性CD206陽性)の増加が観察されることから、マクロファージも再生組織の恒常性の維持に重要な働きを示していることがわかった (論文投稿中)。また、Nerve growth factor, calcitonin gene-related peptide, およびsubstance Pなど神経関連因子の発現を検索し、歯髄組織の再生が進行するとともに、歯髄神経の再構築が起こることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続きラット歯冠歯髄再生モデルを用い歯髄組織再生の促進に関連のある遺伝子やタンパクの発現解析を継続して行うとともに、歯髄幹細胞・血管内皮細胞混合移植の再生促進効果の解析の実験を開始する。 これまでと同様の手法を用いてラット切歯歯髄幹細胞(CD146+MAP1B+細胞)に加えて血管内皮細胞(CD146+MAP1B-細胞)の磁気分離を行う。次いで、幹細胞・血管内皮細胞添加三次元スキャホールドを作成し、上顎第一臼歯歯冠歯髄腔に3, 7, 14, 28日間埋入したのち、前年と同様の手法で再生した歯髄組織に対する免疫組織化学的解析を行う。血管新生関連因子(血管増殖因子(vascular endothelial growth factor(VEGF)、fibroblast growth factor、angiopoietin、血小板由来成長因子)の発現についても、ウェスタンブロット法を用いて解析する。さらに血管内皮細胞マーカー(CD31)に対する免疫染色後、レーザーキャプチャーマイクロ代セクション法にてCD31陽性血管内皮細胞を採取し、全RNAを抽出後、VEGF受容体(Flt-1、Neuropilin-1、KDR)および血管新生関連遺伝子(Bcl-2、CXCL1、CXCR2)に対するmRNA発現の解析を実施する。昨年度と同様手法を用い、再生歯髄組織で特異的に発現が変量する遺伝子を、マイクロアレイを用い網羅的にスクリーニングする。前年度の結果と合わせて検証し、歯髄組織再生の促進および血管新生の促進に関連のある遺伝子を絞り込む。歯髄組織再生に最も関係のあると考えられる遺伝子を同定する。
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