研究課題/領域番号 |
17H04385
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
友清 淳 九州大学, 大学病院, 講師 (20507777)
|
研究分担者 |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
長谷川 大学 九州大学, 大学病院, 助教 (20757992)
吉田 晋一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (30778866)
濱野 さゆり 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 教授 (60380466)
杉井 英樹 九州大学, 大学病院, 助教 (80802280)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / 神経堤細胞 / 歯根膜幹細胞 / ティッシュエンジニアリング / ヒアルロン酸 / 低分子化合物 |
研究実績の概要 |
iPSC-NCLCからiPSC-NCLC-PDLへの分化過程における遺伝子発現比較を行い、神経堤細胞からPDLSCへと分化する過程において、発現が大きく亢進する遺伝子群について解析を行った。その結果、ある遺伝子ファミリーにおいて、発現量の変化した遺伝子が複数認められた。さらに神経堤細胞株であるSK-N-SHを歯根膜幹細胞へと分化誘導したところ、iPS細胞を用いた場合と同様に、この遺伝子ファミリーの発現変動を認めた。これらの結果から、この遺伝子ファミリーが神経堤細胞が歯根膜幹細胞へと分化する上で、重要な役割を果たす遺伝子群である可能性が示唆された。次に、この遺伝子ファミリーを標的とする低分子化合物を、SK-N-SHが歯根膜幹細胞へと分化する際に添加したところ、歯根膜幹細胞への分化が促進された。これらの結果から、この低分子化合物が神経堤細胞を歯根膜幹細胞へと分化誘導するシグナル因子として機能する可能性が示唆された。ティッシュエンジニアリングの成功には細胞、シグナル因子に加え、足場材も重要な役割を担う。そこでiPSC-NCLCおよびiPSC-NCLC-PDLの遺伝子発現比較の結果から、ヒアルロン酸を足場材候補として選出した。ヒアルロン酸存在下にてSK-N-SHを歯根膜幹細胞へと分化誘導したところ、ヒアルロン酸は歯根膜幹細胞分化に対して抑制作用を示さなかった。本研究より、iPS-NCLC-PDL-ヒアルロン酸-低分子化合物の複合体が、歯周組織を再生させる上で有効である可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ティッシュエンジニアリングには細胞-足場材-シグナル因子の複合体が重要であることが報告されている。本研究は、iPSC-NCLCからiPSC-NCLC-PDLへの分化過程における遺伝子発現パターンの解析結果から、神経堤細胞からPDLSCへと分化する上で重要な働きをする遺伝子を同定し、それらを基にした細胞-足場材-シグナル因子複合体の作製を目的としている。これまでの研究にて、iPS細胞から分化誘導した神経堤細胞および歯根膜幹細胞が歯周組織の再生に有効であることを明らかにしてきた。さらに本年度の研究により、ヒアルロン酸が足場材として有効であること、低分子化合物がシグナル因子となりうる可能性が高いことを明らかにした。さらに神経堤細胞-ヒアルロン酸-低分子化合物の複合体作製に至ったことから、申請者らはおおむね順調に実験を進められていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、ヒアルロン酸が足場材として有効であること、低分子化合物がシグナル因子となりうる可能性が高いことを明らかにしているが、低分子化合物の至適濃度を決定するため、様々な濃度での検証を行う予定である。またヒアルロン酸は各種分子量によっても反応性が異なることが報告されていることから、様々な分子量のヒアルロン酸を足場材として用いることを計画している。これにより、神経堤細胞-ヒアルロン酸-低分子化合物の複合体の歯周組織再生能の増強が予想される。また当研究室は、歯周組織欠損モデルマウスの作製方法を確立している。そこで、神経堤細胞-ヒアルロン酸-低分子化合物の複合体を同部位へ移植し、その治癒効果について組織学的に検証を行う予定である。それにより、in vitroでの研究結果を、in vivoにおいても確認することができる。
|