研究課題/領域番号 |
17H04389
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
峯 篤史 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60379758)
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研究分担者 |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (80174530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CAD/CAM冠 / メタルフリー補綴 / 接着歯学 |
研究実績の概要 |
【CAD/CAMレジン冠の予後調査(後向き臨床研究)】 93名(男性 24名, 女性 69名, 平均年齢 59.6 ± 12.9歳)109装置(平均18.7±10.1か月)のうち22装置にトラブルが認められ,その内訳は脱離が19,破折が1,歯根破折が2であった.多変量解析の結果,最後方臼歯か否かに有意差を認め(P=0.03),その他の因子には有意差は認められなかった(上顎/下顎;P=0.32,第一小臼歯/第二小臼歯;P=0.06,支台築造の有無と種類;P=0.13,ブロックの種類;P=0.27,冠装着用材料;P=0.78). 【人工唾液汚染がCAD/CAM冠用レジン‐接着性レジン間の接着に与える影響】 人工唾液汚染によりCAD/CAM冠用レジンと接着性レジンの接着強さは著しく低下するが,サンドブラスト処理およびリン酸処理により接着強さは回復する傾向が確認された.汚染がない環境でも各洗浄処理により初期接着強さおよび長期耐久性が低下したことから,接着過程における水の使用は接着能を低下させる原因となる可能性が示された. 【ヒト唾液汚染後の接着阻害因子の解析 -唾液由来タンパクについて】 SEM-EDX分析によりヒト唾液汚染群においてヒト唾液由来のMgおよびCrが検出された.MALDIによる質量分析では,ヒト唾液汚染により被着面のNaイオンおよびKイオンが増加し,各洗浄処理後も複数のイオンの付着が認められたが,接着強さの回復を認めたサンドブラスト群は対照群と類似したスペクトルを示した.SDS-PAGEによりヒト唾液汚染群にバンドを検出し,ウェスタンブロッティングでヒト唾液αアミラーゼを確認した.以上のことからヒト唾液汚染によりCAD/CAM冠用レジン表面に唾液由来タンパクやイオンが付着するが,各洗浄処理により唾液由来タンパクは除去できることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書どおりに実験が遂行されており,データ採得も問題なく進んでいる.学会発表に加えて,英語論文発表もあることから,順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
メタルフリー補綴のさらなる普及を最終目標とし,CAD/CAMレジン冠治療におけるエビデンスレベルの向上を目的とし,臨床研究と基礎研究を融合して遂行する. <臨床研究> 29年度に採得した後向き臨床研究結果と「3次元デジタルデータ」を照らし合わせて,冠脱離に影響を及ぼす冠および支台歯の形態的要因に着目してCAD/CAMレジン冠が失敗に至る要因を統計学的に解析する. <基礎研究> CAD/CAM冠用レジンと接着性レジンセメントの適切な接着方法を明らかにするために,唾液汚染が接着能を低下させる原因を究明する.本年度は,29年度に行った「唾液由来タンパク質」に続き,「表面残留水分」に注目して分析を行う.接触角の測定に備品「小型接触計(P200A)」を設置する.
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