研究課題/領域番号 |
17H04390
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (80174530)
|
研究分担者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50367520)
萱島 浩輝 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (50632121)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | テーラーメイド医療 |
研究実績の概要 |
口腔顔面領域の疼痛を主徴とする疾患は少なくないが,圧倒的に発症頻度の高い疾患は顎関節症である.従来,診断および治療が困難な疾患として敬遠されがちであった顎関節症は,臨床エビデンスの確立により近年になってその診断法および治療法が進歩し,ようやく‘治せる’疾患になった.その一方で,適切と思われる治療を行っても思うような治療効果が得られない難治性の顎関節症患者がいることも臨床上の事実である.顎関節症患者が治療計画通りに治癒に向かうか,慢性化・難治化するかの分かれ道には,遺伝学的要素が少なからず関連しているとの指摘があるが,その詳細は不明である.本研究は,遺伝学的見地から術前に顎関節症の慢性化のリスクを予知する方法の探索を試みることを目的とする. 平成29年度は,遺伝学的アプローチにおいて,過去に来院した顎関節症患者において症型分類を行い,来院患者の特異性を検討した.その結果,非復位性関節円板転移が全体の35.7%を占め,非復位性関節円板転位において変形性顎関節症を随伴しているものが多い傾向が認められた.さらに,82名の若年成人を対象に起床時の顎・頭部の痛み・口渇感をvisual analog scaleで評価し,さらに睡眠検査の結果との関連を調べた.VASで10mm以上をカットオフとしたところ,7%が顎の痛みを,9%が起床時に頭部の痛みを、73%が口渇感を訴えた.全体的な睡眠の状態は正常範囲内と考えられたが,軽度の頭の痛みと口渇感を有する被験者と,そうでない群と比較すると,Chicago criteriaで判定した無呼吸低呼吸指数は高い傾向を示した.また,これまでに睡眠検査を実施した5名の慢性的な顎関節症患者の睡眠は,質や安定性が低い傾向を認めた.また,バイオロジー的アプローチにおいて,動物実験計画について倫理委員会からの承認を受け,セットアップまで行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在,来院患者の症型分類を含めた特異性を探索しているいっぽう,口腔粘膜試料を採取するにあたり,ヒトに関するゲノム研究のため,倫理委員会の承認を得る必要があるが,その承認が遅れている.また,動物モデルにおいても,三叉神経節からの神経細胞の分離培養の手法と神経細胞の適切な培養方法にさらなる検討が必要であるため.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き来院患者のフェノタイプを含めた特異性の探索を進めるとともに,早急にヒト倫理委員会から承認を得て,口腔粘膜試料の採取を進めて遺伝学的アプローチを進めていく.バイオロジー的アプローチでは,ラット三叉神経節由来神経細胞を用いた慢性疼痛評価モデルの確立を目指していくが,モデルの確立にはまだ時間を要するため,遺伝学的アプローチを優先して行っていく.
|