研究課題/領域番号 |
17H04394
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西村 正宏 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (00294570)
|
研究分担者 |
石井 正和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00456683)
朝比奈 泉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (30221039)
山田 和彦 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 教授 (40241103)
小戝 健一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90258418)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 再生医療 / 間葉系幹細胞 / 骨再生 |
研究実績の概要 |
顎骨骨髄中に存在する間葉系幹細胞(MSC)は高い骨分化能を有し、骨再生医療のセルソースと期待される一方、顎骨骨髄由来MSCは非常にヘテロな細胞集団であり、in vitroでの分化能や、移植による骨増生効果は移植細胞間によるバラツキが大きい。従って、顎骨MSCによる骨増生治療を成功させるためには顎骨MSCの特性を正確に理解することが重要である。 我々の先行研究により、顎骨MSCは腸骨骨髄由来MSCに比べ、骨分化能は同等であるが、脂肪分化能、軟骨分化能が低いことが明らかとなっている。そこで本年度は、このような分化能の差が生じる分子メカニズムの探索を目的として研究を行った。本研究には3名の患者より採取された顎骨MSC、およびロットの異なる3つの腸骨MSCを購入し実験に用いた。未分化顎骨MSCと未分化腸骨MSCにおいて、幹細胞マーカーであるOCT-4、SOX2、Nanog遺伝子発現比較を行った結果、OCT-4、SOX2が顎骨MSCにおいて低発現の傾向を示した。次に、骨分化および脂肪分化関連遺伝子発現比較を行った結果、脂肪分化マーカーであるC/EBPαの発現が顎骨MSC群において低いことが明らかとなった。顎骨MSCは神経堤由来であり、腸骨MSCは中胚葉由来の細胞であることから、由来(局在)の差による影響を評価するために、神経堤細胞マーカーのSOX10、p75NTR、FOXD3遺伝子発現比較を行ったが、いずれの因子も有意な発現差は認められなかった。 近年、細胞の分化や増殖を調節する因子としてmiRNAが注目されている。そこで、本年度は、顎骨MSCと腸骨MSCにおけるmiRNA発現パターン比較を行うことを目的とし、5名の患者より採取された顎骨MSC、および3つのロットの異なる腸骨MSCのmiRNA発現解析の依頼を行った。現在データの解析を実施中であり、次年度以降の継続課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで顎骨MSCと腸骨MSCとの分化能の差を詳細に評価した報告は無く、分化能の差の原因となる分子メカニズムは不明であったが、本年度の研究成果により、一部ではあるが幹細胞性を示すマーカー発現(OCT-4、SOX2)、および脂肪分化関連マーカー遺伝子発現に差があることを初めて明らかにした。 一方、当初の計画では、H30年度内にmiRNA発現解析を終了し、分化能を制御する因子の特定を行う予定であったが、この点が未達の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は顎骨MSCおよび腸骨MSCにおけるmiRNA発現パターンを詳細に解析を行い、顎骨MSCを特徴づける分子の同定を目指す。また、顎骨MSC間で骨分化能に差が認められた細胞間において、分化能の程度とmiRNAの発現パターンとの相関性を解析し、分化能を事前に予見し得るマーカーとしてそれらのmiRNAが利用可能であるか評価を行う。必要に応じて評価する顎骨MSCを増やし、追加でmiRNA発現解析を行う。 さらに、上記のmiRNA発現解析と併せて、顎骨MSCから培養上清中に分泌される分子(サイトカイン、エクソソーム)を採取し、in vitroでの骨分化能および生体内での骨形成能との相関性を示す因子の探索を行う。 上記の項目を検討することにより、顎骨MSCの骨形成能を事前に予見するための新規品質管理技術の開発を目指す。
|