研究課題
顎骨骨髄中に存在する間葉系幹細胞(MSC)は腸骨由来MSCと同等かそれ以上の骨分化能を有し、顎骨増生を図るための有望なセルソースと考えられるが、現実的には顎骨MSC移植による骨増生効果にはバラつきが大きく、治療効果を一定にコントロールすることはできない。顎骨MSCによる顎骨増生療法を成功させるためには、顎骨MSCの特性を正確に理解することが重要である。本年度は、5名の患者より採取した顎骨骨髄由来MSC(MBMSC)とロットの異なる3つの腸骨骨髄由来MSC(IBMSC)を購入し、両細胞の特性比較をおこなった。初めにMBMSCとIBMSCにおける細胞表面抗原発現比較を行った。代表的なMSCマーカーにおいてMBMSCおよびIBMSCの両細胞間で差は認められなかった。次にMBMSCと腸骨骨髄由来MSC(IBMSC)との骨・軟骨・脂肪分化能の比較をおこなった。MBMSCとIBMSCにおいて骨分化能と軟骨分化能は、個体間のバラツキはあるものの、両細胞間で大きな差は認められなかった。一方、脂肪分化能においては、MBMSCはIBMSCに比べ明らかに分化能が抑制されていることが明らかとなり、MBMSCとIBMSCでは明らかに機能が異なることが判明した。次にMBMSCとIBMSCにおいて分化能が異なる分子メカニズム解明のために、細胞内に発現するマイクロRNA(miRNA)の網羅的解析をおこなった。解析の結果、MBMSCにおいてIBMSCより4倍以上高発現するmiRNAが30個程度あり、逆にIBMSCで高発現するmiRNAにおいても同様に30個程度存在することが確認された。現在、これらのmiRNAの中で、細胞分化の調整に関与する因子をピックアップし、機能解析を実施中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular and Cellular Biochemistry.
巻: 455 ページ: 185-193
10.1007/s11010-018-3481-y.