研究課題
癌に対する放射線療法は,癌細胞に対し高い治療効果を発揮する。一方で,健常細胞や組織に対して有害事象を生じさせ,中でも,皮膚への障害は避けがたい有害事象の1つである。これまでヒト歯髄幹細胞由来の分泌因子は様々な難治性疾患に対して高い治療効果を発揮することが明らかにされてきた。そこで本研究は,ヒト歯髄幹細胞由来培養上清の放射線照射による皮膚障害に対する治療効果について検討することを目的とした。放射線皮膚障害モデルマウスをICR系統マウス・雌の7週齢を用いて制作した。頸部を除毛し,頸部皮膚に対して15Gyのエックス線を単回照射した。ヒト歯髄幹細胞由来培養上清0.5ccを,照射直後より7日間,尾静脈より投与した。7日目に,皮膚外観の障害程度を評価をした。また,H-E染色による病理組織学的観察を行い,放射線障害による真皮の肥厚および炎症性細胞の浸潤を評価した。対称群として,培養上清非投与群を用いた。なお,本研究は,徳島大学動物実験委員会(承認番号T28-92)および徳島大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号3268)。実験結果では,培養上清非投与群において照射部位の皮膚に著しい潰瘍の形成を認めた。一方、ヒト歯髄幹細胞培養上清投与群では軽度の炎症を示す程度であり,皮膚障害が有意に減少することが明らかとなった。また,H-E染色による病理組織学的評価においては,培養上清投与群では放射線による真皮の肥厚が軽減し,炎症性細胞の浸潤も抑制されていることが示された。本研究により,放射線照射による皮膚障害が歯髄幹細胞由来培養上清を投与することにより抑制されることが示唆された。歯髄幹細胞由来培養上清によって,放射線治療に伴う様々な組織障害を軽減することができれば非常に有用な新規治療法の提案となり得る。今回得られた知見を発展,応用することによって,放射線照射に伴う組織障害の予防法の開発へと繋がるものと考えれた。
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