研究課題
(1)WT1特異的CTLによるOSCC細胞株殺傷活性における抗PD-1抗体の効果(in vitro実験):HLA-A*24:02(日本人の約60%)あるいはHLA-A*02:01(日本人の約20%)を保有する健常人及び口腔扁平上皮癌(OSCC)患者由来末梢血単核球(PBMC)よりリンパ球分画と単球分画を分離し単球分画より樹状細胞(DC)を分離し、WT1ペプチドをパルスしWT1-DCワクチンを作製した。リンパ球分画からCD8+T細胞を分離・培養し、WT1-DCワクチンと共培養後WT1抗原、HLA-A,B,C、PD-L1あるいはPD-L2の発現を確認されたOSCC細胞株に対するキラー活性を51Cr遊出法にて測定し、WT1特異的細胞傷害性T細胞(WT1-CTL)が誘導されている事を確認した。各濃度の抗PD-1抗体を加えることによりWT1-CTLのキラー活性が増強された。DCワクチンと抗PD-1抗体の併用により、WT1-CTLがより強力に誘導される事が明らかとなった。(2)抗PD-1抗体+WT1-DCワクチン併用免疫療法の治療効果(動物実験):前実験において、同系腫瘍細胞を移植された担癌マウスを、WT1ペプチドをパルスされた同系マウス骨髄由来DCワクチンと抗PD-1抗体の併用療法が、各々の単独治療と比較して治療効果(腫瘍増殖抑制、生存期間、WT1-CTL誘導等)が高い事を強く示唆する結果が得られた。次年度にはマウス数を増やして検証実験を行う。(3)OSCC組織の免疫組織化学的染色(PD-L1およびPD-L2タンパク等の発現解析):OSCC患者由来の手術あるいは生検材料を用いた免疫組織化学染色にてPD-L1およびPD-L2タンパクの発現を検索した。まだ少数例であるが、これらのPD-1リガンドの発現が高い症例は予後不良である傾向が認められた。次年度も引き続き行いデータを蓄積する。
2: おおむね順調に進展している
in vitro実験、in vivo実験、癌患者手術あるいは生検検体を用いた研究により、ほぼ当初の仮説通りの結果が得られ、繰越期間を含めた研究機関内に、おおむね予定通りの研究の進展があった。
初年度(繰り越し期間を含む)に行ったin vitro及びin vivo実験、癌患者手術あるいは生検検体を用いた研究より得られた成果をもとに、さらに動物実験の拡大、患者検体解析の症例数拡大を行いデータを蓄積するとともに、抗PD-1抗体+WT1-DCワクチン併用免疫療法の第I/IIa相臨床試験の実施に向けて準備を整える。臨床研究の実施においては、実施する医療機関と充分に連携して進めるとともに、倫理的な問題点に十分に配慮し、各施設の倫理委員会の承認を得たのちに行う。また、樹状細胞ワクチンの臨床応用は、再生医療等安全性確保法(再生医療新法)にのっとって行われなければならない。
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