研究実績の概要 |
(1) 癌抗原パルス樹状細胞(DC)による抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導とPD-1/PD-L1経路阻害の影響:癌抗原を複数組み合わせる事でより高い治療効果が得られる。WT1に加えて口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞で発現が報告されているMUC1及びsurvivinに対するCTL誘導について確認した。各々の抗原ペプチドとHLA型の適合する健常人及びOSCC患者由来末梢血単核球より分離・培養したCD8+T細胞と各ペプチドをパルスした同ドナー由来DCを共培養し、各抗原に対して特異的CTLを誘導する事を確認した。抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体添加で、より強力に癌抗原特異的CTLが誘導される事も確認された。 (2) 抗PD-1抗体+癌抗原パルスDCワクチン併用免疫療法の治療効果:本年度は同系腫瘍移植マウスを、癌抗原(WT1, MUC1およびsurvivin)パルス同系マウス骨髄由来DC及び抗PD-1抗体で治療する事により、各々単独治療と比較して強い抗腫瘍効果を認めた。治療開始7日目より腫瘍浸潤リンパ球および脾臓リンパ球において各癌抗原特異的CTLの誘導と血清中IFNγ誘導を認めた。 (3) OSCC組織のPD-L1およびPD-L2タンパク等の発現解析:初年度、前年度から引き続き手術材料の免疫染色を実施しデータを蓄積した。PD-L1発現無しあるいは低発現患者において、無再発生存期間および全生存期間の延長傾向を認めた。 (4) 抗PD-1抗体+DCワクチン併用療法(パイロットスタディ):協力医療機関で6例の切除不能口腔癌患者に同治療を行い経過観察中である。抗原としてWT1+MUC1あるいはWT1+MUC1+survivinのカクテルを用いた。全例で、使用した癌抗原のうち少なくとも1種の癌抗原に特異的なCTLの誘導を確認した。今後も引き続き症例を拡大してゆく予定である。
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