研究課題
骨細胞性骨溶解は骨細胞が破骨細胞の様に骨基質を溶解し、生体にミネラルを供給するという概念で、骨代謝学領域で再注目されている事項である。本研究は、矯正学的歯の移動で起こる骨改造に骨細胞性骨溶解が及ぼす影響を生体バイオイメージングとマウスジェネティクスを用いて検討を行い、歯牙移動制御に関与する分子機構を明らかにする。そして、矯正歯科治療期間短縮への臨床展開を見据えた研究基盤の確立する事を目的としている。令和元年度実施計画では、マウスを用いた実験的歯の移動モデルを用い、骨細胞性骨溶解の変動について時空間的解析を行う予定であったが、進捗状況に若干の遅れが生じている。これは、主要な解析手法として用いる電子顕微鏡用の標本作成に時間を要しているためである。他方、本研究代表者は骨細胞が分泌するCathepsin Kが骨細胞性骨溶解を含めた授乳中の骨代謝調節に寄与し、それが副甲状腺ホルモンの作用を負に調節するためである事を明らかにし、これらの結果をJ Clin Invest誌にて論文報告を行った。さらに、矯正学的歯の移動で起こる骨改造について、歯根膜からの細胞内カルシウムシグナルが重要な役割をなす事を見出し、これらの結果をFASEB J誌にて論文報告を行った。今後は電子顕微鏡用標本数の削減を考慮しつつ解析を進める一方、過去3年間の研究で得られた結果と骨細胞性骨溶解との関連性について研究を発展させていく予定である。
3: やや遅れている
電子顕微鏡での観察に必要な標本作成に時間を要しているためである。Backscatter画像の取得並びに定量解析可能な画像取得のための標本作成工程には様々なステップが必要となるためである。
電子顕微鏡での観察に必要な標本作成及び解析は、工程に様々なステップが必要となっている。そのため、最終的な結果を得るまでに当初の予定以上の期間を要している。今後の推進方策として、定量解析に用いる標本数を当初の予定よりも少なくし、結果の迅速な判定を試みる。また、関与が想定されるシグナル因子についてin vitroでの検討を先行して行う。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
Journal of Clinical Investigation
巻: 128 ページ: 3058-3071
doi: 10.1172/JCI122936.
FASEB Journal
巻: 33 ページ: 10409-10424
doi: 10.1096/fj.201900484R. Epub 2019 Jul 15.