研究課題
多能性を有する間葉系幹細胞は,骨芽細胞,脂肪細胞,筋細胞,軟骨細胞等に分化できる細胞で,骨や血管,心筋の再構成を期待した再生医療への応用が開始されている。近年では,神経(外胚葉),肝細胞(内胚葉)などと胚葉を超えた分化能も報告され,体のあらゆる組織に存在することから再生医療における細胞ソースとして大きな期待がかかっている。しかしながら,細胞特性についてはまだ不明な点が多い。そこで,本研究では細胞外環境の一つである圧環境に着目し,細胞外圧が間葉系細胞の分化および維持に関わる分子制御機構を明らかにすることを目的とした。 独自に作成した加圧培養装置ならびに浸漬培養法を用いて,それらの中で間葉系幹細胞(UE7T-13およびSDP11,脱落乳歯歯髄幹細胞)を培養し,圧力負荷の環境下での骨芽細胞,象牙芽細胞の分化マーカーの発現をreal time PCR法を用いて検討を行った。さらに,遺伝子発現を最も誘導した圧力で石灰化誘導したところ,圧力を付加しない通常の培養と比較し,劇的に石灰化を促進させることがわかった。次に,加圧環境下における細胞内シグナル伝達経路の解析をウエスタンブロティング法を用いて解析したところ,MAPKファミリーのERK1/2およびp38 MAPKが有意に活性化することを見いだした。さらに,この圧受容体として,機能する受容体の検索を行ったところ,ピエゾ型圧受容体(PIEZO1)がその役割を担っていることを明らかにした。間葉系幹細胞におけるPIEZO1の発現をsiRNA法を用いて遺伝子の発現抑制を行ったところ,圧刺激によって誘導される骨芽細胞,象牙芽細胞の分化,石灰化が抑制されることがわかり,間葉系幹細胞の圧刺激による分化にPIEZO1が重要な役割を担っていることを明らかにした。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: e14762
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