研究課題/領域番号 |
17H04420
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
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研究分担者 |
佐藤 拓一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10303132)
泉福 英信 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (20250186)
鷲尾 純平 東北大学, 歯学研究科, 講師 (20400260)
坂本 光央 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (50321766)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔マイクロバイオーム / 代謝活性 / リアルタイム代謝測定法 / メタボローム解析 / Scardovia属 |
研究実績の概要 |
1.口腔マイクロバイオームの包括的な代謝測定:研究倫理審査に基づきボランティアから採取した微量の口腔マイクロバイオーム試料(質重量:5~10 mg)を、糖、ペプチド、アミノ酸混合物等と混合し、その時の代謝活性を、我々が確立した「リアルタイム代謝測定法」を用いて、定量的に測定することを可能とした。この結果から、代謝活性は個人差に加え、部位差が大きいことが明らかになった。さらに、当初の糖代謝活性優位との予測を覆し、ペプチド・アミノ酸代謝活性も十分に高いことが確認された。 2.代謝データベースの構築への準備:1で得られた代謝反応試料を、我々が確立した「微量メタボローム解析法(キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS))」を用いて解析することで、口腔マイクロバイオームの全体的な代謝の様相を可視化することが可能となり、基本的な代謝経路ネットワークの存在が明らかになった。 3.新たな齲蝕関連細菌Scaridovia属の代謝解析:本研究期間内において、これまでにない糖代謝特性をもつ新規な齲蝕関連細菌Scardovia属の分離同定の報告が相次いだ。そのため、代謝データベースの基盤の一つとして、本細菌属のもつ代謝活性の詳細な解析が必要となった。1、2の手法を用いて、Scaridovia属の糖代謝特性の解析を行ったところ、本細菌属の基本的な代謝系が明らかになった。 4.研究結果の公表:以上の結果を学会にて発表し、広く議論を行い、その一部は論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間中、メタボローム解析用のキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)に不測の故障が生じたため、当分析計を調整する必要が生じ、メタボローム解析が一旦中断し、再開までに4ヶ月間を要した。しかし、その後、順調に解析が進み、当初の目的まで研究が進んだ。さらに、急遽、データベースの基盤として、Scardovia属の代謝解析も行うこととしたが、こちらの研究も順調に進めることができた。以上のことから、全体として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.「代謝的復元力」の測定と解析:採取した口腔マイクロバイオーム試料に唾液を加え「リアルタイム代謝測定法」で代謝活性を定量測定し、「キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)でその時のメタボローム解析を行う。唾液に含まれる硝酸塩は、口腔マイクロバイオームによって亜硝酸となり、ネガティブフィードバック的に代謝を抑制する可能性があるため、代謝的復元力を支配する最大候補と期待される。 2.代謝的復元力を持つ細菌の分離・同定:口腔マイクロバイオーム試料血液寒天平板に播種し、形成したコロニーから代謝的復元力を示すコロニーを分離し、16S rRNA gene シーケンシング法にて菌種を決定する。とくに硝酸塩/亜硝酸塩代謝活性をもつ細菌に着目する。 3.新規齲蝕関連細菌Scardovia属の代謝解析:本研究期間中、Scardovia属が新規齲蝕関連細菌として注目されるようになった。本研究計画の目的の一つである代謝データベースの構築には、口腔マイクロバイオームの全体の代謝だけではなく、それを構成する個々の細菌の代謝情報が不可欠である。そこで、今後の研究項目として、Scardovia属の代謝解析を加えることとする。
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