研究課題/領域番号 |
17H04421
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森田 学 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40157904)
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研究分担者 |
丸山 貴之 岡山大学, 大学病院, 助教 (30580253)
竹内 倫子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50403473)
江國 大輔 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70346443)
友藤 孝明 朝日大学, 歯学部, 教授 (80335629)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オーラルフレイル / 共分散構造分析 / 栄養状態 |
研究実績の概要 |
身体フレイルに影響する因子として栄養,オーラルフレイル,社会的フレイルなどがあげられている.オーラルフレイルは,些細な衰えから始まる口腔機能の動的な変化の過程および現象である。そこで、具体的に口腔機能のなかでどのような指標が、どのようなステップを経て、身体フレイル、社会的ラルフレイルと関連するのか解析した。2017年11月から2018年9月までの間に岡山大学病院予防歯科外来を受診した患者で,本研究に同意を得られた203人(男性63人,女性140人,平均年齢74.6±6.8歳)を対象とした。口腔内診査では現在歯数,機能歯数、歯周組織の状態を診査した。嚥下機能は嚥下スクリーニング質問紙(EAT-10)で評価した。栄養状態は簡易栄養状態評価を用いた。身体機能についてはFriedらのフレイル評価基準に当てはまる項目数および生活の広がりを評価した.生活の広がり(休まず歩ける距離、転ばない自信、自宅での入浴動作)はElderly Status Assessment Set(E-SAS)を用いて評価した。統計処理は共分散構造分析を用いた。統計ソフトはM-Plus Ver8.2を使用し,有意水準は5%とした。 共分散構造分析の結果,身体フレイルや生活の広がりに関連する「口腔機能」として抽出された項目はODK(/ta/,/ka)であった.「口腔機能」から栄養状態へのパス係数は0.193,栄養状態からフレイル項目数へのパス係数は-3.222、栄養状態から休まず歩ける距離へのパス係数は0.187であり,有意な関連性が認められた.モデルの適合度はCFI = 0.999,RMSEA = 0.012,TLI = 0.999であり,統計学的許容水準を満たしていた。これらのことから,舌口唇運動機能は栄養状態に影響を与え,身体フレイルおよび休まず歩ける距離に関与することが示された. .
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定に比べると患者数の確保は不十分であると言える。しかし、本研究の当初目的であった、「具体的にオーラルフレイルのうちのどの評価項目が、身体のプレフレイル、フレイルに関係しているのか」という点については、仮説を設定することができた。すなわち、オーラルディアドコキネシス(ODK)(/pa/,/ta/,/ka/)で評価される舌口唇の運動機能がクローズアップされた。 次は、縦断研究において、ODK(/pa/,/ta/,/ka/)の各指標が将来のプレフレイル、フレイルを左右する要因であるか否かを確認できる。ODK低下による栄養低下やプレフレイル・フレイルへの相対危険度も算出が可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度より大学病院外来患者を対象に、全身のフレイル、オーラルフレイル(口腔のフレイル)判定とそれに関連すると思われる要因を収集してきた。オーラルフレイルの判定には、オーラルディアドコキネシス、舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、咬合接触面積、細菌検査、質問票の結果を用いた。全身のフレイルと関連している可能性のある指標として、身体フレイル指標(BMI、簡易栄養状態評価票結果)、生活のひろがり(活き活きとした地域生活を送っているか否か)、精神・心理状態(WHO Five Well-Being Index)など調査した。また、全身のフレイルまでには至らなくても、その前段階にあるプレフレイルの状態も判定して、正常→プレフレイル→フレイルのステップにおいて、口腔機能がどのように反映されるのか解析してきた。その結果、横断研究という限界はあるものの、パス解析により、1)舌口唇運動機能を評価するオーラルディアドコキネシスが全身フレイルの前段階を反映する指標として有効である、2)舌口唇運動機能の低下が、栄養状態の低下を引き起こし、全身フレイルにつながる、以上の2点が明らかとなった。そこで、初年度の調査に参加した外来患者のうち、3年後のフォローアップ調査への参加にも同意した患者を対象に、オーラルディアドコキネシスと身体フレイルの関連指標を再度調査している。本年度も調査を継続して、3年間のコホート研究を完遂する予定である。これにより、横断研究の成果の信ぴょう性を確認するとともに、歯科医療現場で全身フレイルの予防に対処する方略の一助となす。
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