研究課題/領域番号 |
17H04425
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
コリー 紀代 (伊藤紀代) 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (80431310)
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研究分担者 |
金井 理 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90194878)
近野 敦 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90250688)
二宮 伸治 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (60237774)
浅賀 忠義 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60241387)
小水内 俊介 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (40708004)
井上 創造 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90346825)
萬井 太規 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10765514)
村田 恵理 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (70738476)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カテーテル操作 / 酸素飽和度 / 眼球運動 / 視覚呈示 / フィードバック |
研究実績の概要 |
研究開始後、北海道大学で開発していた「マネキンの顔色や表情を変化させる映像技術」と広島国際大学で開発していた「気道内におけるカテーテルの先端位置・接触力の計測技術」を2月に統合することができた。シミュレーターはESTE-SIM(Endotracheal Suctioning Training Environment Simulator)と命名し、現在、精度の改良と生体反応をプロジェクションマッピングでマネキン上に投影するプログラムを開発中である。 3月上旬には看護師と学生を対象とした研究室内における実験4種を実施した。実験1として、気管内吸引中の看護師と学生のカテーテル操作と喀痰吸引量の関連の調査、実験2に、2D動画と3D動画における看護師と学生の視線の比較、実験3として、気管内吸引中の動作と視線の比較、実験4として、気道粘膜モデルを作成し、カテーテル操作による気道粘膜に与える圧と一の測定を行い、現在、データ解析中である。喀痰吸引時の音が吸引された痰の量と関係している可能性があるため、3月の実験でも音をデータとして収集できるか検討することとなった。 また、1月末と3月末に気管切開を行っている利用者が入所している施設に訪問し、施設勤務看護師が実施する気管内吸引前後のパルスオキシメーターの測定結果とイベント記録を行った。これらの結果は、シミュレーターの改良に使用されるほか、生体反応を示すタイミングや変化量の参考とすることを予定している。 その他、数年前から継続している気管内吸引中の看護師の視線を参考に構築したオントロジーの論文が掲載予定となっている。視線から得られる認知・判断をフィードバックできるようにするためのシステム構成について、引き続き検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道大学と広島国際大学で別々に開発していたシミュレーターの一部を2月に統合することができた。プロジェクションマッピングに関しては、患者CGを用い、表情や顔色の変化等の基本的なコンテンツを作成した。既存の看護シミュレーターの多くが精密な患者ロボットともいえるシミュレーターであることに対し、本シミュレーターは軽量・安価であるというメリットを最大限に生かすため、使用する材料等に配慮をしているが、実験により目的とした数値が得られていること、そして学習者が操作するカテーテルに生体反応を呈示するための熟練看護師の視線等の先行研究を反映できることから、おおむね順調に進展していると判断した。看護シミュレーターにおけるプロジェクションマッピングと複合現実による視覚呈示法について比較検討を行い、その結果は平成30年度の学会論文として投稿中である。 シミュレーターの一部である気道粘膜モデルにおいては、気管内吸引1回の平均吸痰量のエビデンスとなる先行研究が少なく、追加で実験を行う必要性が生じた。カテーテル挿入長と吸引される模擬痰量のダイナミックレンジが明確されつつあるが、当初想定していた吸痰量や挿入長とは全く異なることが明らかとなった。広島国際大学で開発中であったカテーテル操作による気管壁に与える圧力や位置の測定が可能なシステムが完成し、実験4の測定結果を反映して補正プログラムを作成した。現在、平成30年度の学会に投稿予定である。それらの計画に沿った進捗に加え、よりリアルな生体反応の呈示を目指し、気管切開をしている利用者のデータを参考に開発を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1回の気管内吸引による脈拍やSpO2等の生体反応の変化について、その変化率や所要時間などを量的に取りまとめた先行研究が少なかったため、気管切開をしている施設入所者数名の協力を仰ぐこととなった。普段通りにケア提供を受けている際のバイタルサインの変化を測定させていただいている。並行して先行研究をレビューを継続しているところであるが、SpO2や脈拍の変化は吸引後にそれらが問題なく推移している、あるいは酸素投与などの介入により改善していればよしとされ、低下率や回復時間については全く情報が無いという状況であることが明らかとなった。 そのため、生体へ与える影響をまとめ、論文化することにより看護師が提供する気管内吸引の質向上にも貢献できると考えている。パルスオキシメーターのデータをcsvファイルに出力可能な機器を用い、測定することで得られた知見もあった。時間と変化と変化率を評価するために必要な条件や、そのような研究が今まで少なかった原因についても考察し、今後、気管内吸引による生体への侵襲を評価できるよう評価項目の一つとしてデータ収集を継続したいと考えている。 また、カテーテル操作と吸痰量の関連性を見る実験から、最も効率的なカテーテル操作法が見いだされると考えている。吸引圧と吸痰量の関係については多くの先行研究があるためそれらを参考とし、最も安全で効率的な気管内吸引方法について追及する。それによりシミュレーターを用いて提供する教育内容が洗練されると考えられる。以上のように、気管内吸引実施後の的確なアセスメントを行うためのエビデンスと安全で効率的な吸引を行うためのエビデンスを蓄積しつつ、シナリオを含め、シミュレーターに搭載する教育内容、追加すべき機能等、具体的な検討を続ける予定である。
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