研究課題/領域番号 |
17H04428
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡本 成史 金沢大学, 保健学系, 教授 (50311759)
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研究分担者 |
須釜 淳子 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (00203307)
大貝 和裕 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40706983)
杉谷 加代 金沢大学, 保健学系, 助教 (20162258)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 皮膚常在細菌叢 / 寝たきり高齢者 / 褥瘡 / 細菌 / 脂質 |
研究実績の概要 |
これまでの研究と同様に寝たきり高齢者における皮膚細菌叢の構成についてさらなる調査を進め、褥瘡後感染のリスクが高い寝たきりの高齢患者は、リスクが低い若年ないし、自活高齢者よりも腸関連細菌の数が多いだけでなく、本来存在する常在細菌が少ないこと、皮膚のpHが高く、TEWLが低いことを明らかにした。さらに、研究期間中に31名の寝たきりの高齢患者のうち4名が褥瘡を発症し、それらの患者に多くの病原性皮膚細菌が褥瘡創傷内に認められた。以上の結果より、若年、高齢の健常者と比較して寝たきりの高齢患者における皮膚細菌叢の変化と皮膚の生理学的機能の変化が関連して認められるとともに、寝たきり高齢者の非創傷部の細菌叢と創傷部の細菌叢の構成が非常に近似していることを示唆し、これらの細菌群が褥瘡後感染に大きく関与していることを示唆し、寝たきりの高齢患者の皮膚の厳密な洗浄が褥瘡後感染の予防に必要である可能性が考えられた。 褥瘡を起こした寝たきり高齢者のうち、褥瘡を再発した患者について、褥瘡治癒後から褥瘡再発までの細菌叢の変化を経時的に追跡調査した。その結果、褥瘡後の治癒過程において、皮膚のpHが高いこと、他の部位よりも外圧がかかっていることとならび、アシネトバクター属細菌の存在が褥瘡の再発に関連することを明らかにした。 一方、皮膚での創傷部感染症の原因細菌のひとつと考えられるC,G群レンサ球菌 Streptococcus dyslactiae subsp. equisimilis (SDSE)の病原性と皮膚感染症発症との関連性について検討し、SDSEが皮膚への感染症状の発症を示す一方、その病原因子について、単一ではなく、いくつかの因子の可能性が考えられることを示唆し、今後、それらの因子について検討する必要性が考えられた。 皮膚の主成分である脂質の抗菌作用を簡便かつ早急に測定できる方法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高齢者の皮膚細菌叢の変化と褥瘡後感染の因果関係ならびにその背景を明らかにするとともに、褥瘡後感染の予防、緩和ケアに関するいくつかの可能性を見出すことができた。また、予定された研究課題に加えて皮膚の重症感染としてよく知られているSDSEの皮膚への感染のメカニズムの検討も進むとともに、褥瘡後感染の予防、緩和ケアのトリートメント対策の一案である脂質利用に向けて、その効果を測定する簡便且つ早急な方法を開発したことで、どの脂質がトリートメントに最適かを早急に検討することも可能となった。 以上の理由から、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる次年度は、今年度の研究成果を基に、①寝たきり高齢者における皮膚常在細菌叢の変化と褥瘡後感染および褥瘡の再発との因果関係を明らかにするとともに、その因果関係に主導的な役割を有する細菌を明らかにする、②皮膚常在細菌叢の変化に伴うSDSEなどの皮膚侵襲性の高い病原細菌の皮膚への侵入増強の可能性とその原因の一端の解明に向けた検討を進める、③寝たきり高齢者での褥瘡および褥瘡後感染発症に対する予防・緩和ケアの対策として、皮膚の効果的な洗浄作用、褥瘡発症に関与する細菌に対して抗菌効果を示す脂質(セラミド、中鎖脂肪酸など)を検索し、それをクリームとして使用した場合での褥瘡発症予防効果について検討する。
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