careとcureを融合した看護薬剤学モデルの開発

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H04432
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 赤瀬 智子 横浜市立大学, 医学部, 教授 (50276630)
• 研究分担者: 槇原 弘子 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00708696) ; 崔 吉道 金沢大学, 附属病院, 教授 (40262589) ; 寺内 康夫 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40359609) ; 土肥 眞奈 (菅野) 横浜市立大学, 医学部, 講師 (50721081) ; 佐武 利彦 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (60271318) ; 伊吹 愛 横浜市立大学, 医学部, 講師 (60738805) ; 叶谷 由佳 横浜市立大学, 医学部, 教授 (80313253) ; 柏木 聖代 横浜市立大学, 医学部, 教授 (80328088) ; 嶋田 努 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90409384) ; 柳田 俊彦 宮崎大学, 医学部, 教授 (60295227)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 看護学 / 薬理学 / 教育

研究実績の概要

患者の身体や生活状況、心理的要因を包括的に捉え、患者の生活にあった、安全で有効な与薬方法を医療者間で検討し最大薬理学効果を得るための教育内容を開発するのが目的である。現状の患者への与薬方法の実態を把握するため実態調査及び薬理学の教育の現状については海外からの資料の収集及び文献検討中である。現在、肥満による皮膚障害の問題から経皮吸収型製剤の効果が変化するという課題がある。本年度は経皮吸収に与える要因の検証として①肥満糖尿病と皮膚の関連、②肥満と皮膚バリア機能の関連を検証した。①の結果、40歳代の肥満糖尿病者の皮膚は、皮膚機能検査を実施したところ、角質水分量が減少し、水分蒸散量が増加し、老化の指標である糖化タンパク質の増加、コラーゲン線維密度の減少を示し、肥満糖尿病者では80歳代の高齢者に見られる皮膚老化が観察された。②の結果、手術時の余剰ヒト皮膚を採取し解析したところ、皮膚のバリア機能を担うコレステロールと脂肪酸量とBMIとの相関は、BMI 22を頂点に逆U字型に両脂質の減少が明らかになった。また、肥満の皮膚では角化細胞の増殖や表皮の肥厚の構造変化が生じていた。つまり、バリア機能の低下が示唆された。肥満者は皮膚の老化、皮膚脂質量が低下及び皮膚の構造変化を生じていることから、経皮吸収型製剤からの薬剤の吸収は変化することがわかり、肥満が経皮吸収型製剤の効果や副作用に影響する要因であることがわかった。経皮吸収型製剤を通し、与薬時のエビデンス創出として、リスク因子を見える化すると共に看護学における基礎実験研究の方法論（生理機能検査、組織学的・分子生物学的解析）の構築を行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

患者への与薬方法の実態を把握するため実態調査は、真の患者の服薬状況の実態がわかる研究方法の検討及び薬理学の教育の現状については海外からの資料の収集に時間を要しているため、先に肥満による皮膚障害の問題から経皮吸収型製剤の効果が変化するという課題に対し、与薬時のエビデンス創出と看護学における基礎実験研究の方法論の構築を実施した。本結果はすでに論文投稿し海外雑誌にアクセプトされた。

今後の研究の推進方策

日本の医療の与薬に関する課題と薬理学教育のニーズを見出すための調査を実施するため、各文献のレビューをするとともに、与薬の実態調査のフィールド調整、倫理審査申請をし、実態調査の実施に向けての準備を行う。また、与薬方法のエビデンスの創出に対し、本年度に続き、経皮吸収に影響を与える要因については軟膏の塗布方法の確立を、また、便秘薬の与薬方法の確立について実施する予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Reduced skin lipid content in obese Japanese women mediated by decreased expression of rate-limiting lipogenic enzymes (2018)
  • 著者名/発表者名: Y Horie, H Makihara, K Horikawa, F Takeshige, A Ibuki,T Satake, K Yasumura, J Maegawa, H Mitsui, K Ohashi, T Akase
  • 雑誌名: PLOS ONE 巻: 13(3) ページ: -
  • DOI: 10.1177/2050312118756662
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Aging -like physiological changes in the skin of Japanese obese diabetic patients (2018)
  • 著者名/発表者名: A Ibuki , S Kuriyama , Y Toyosaki , M Aiba , M Hidaka , Y Horie , C Fujimoto , F Isami , E Shibata, Y Terauchi , T Akase
  • 雑誌名: SAGE Open Medicine 巻: 6 ページ: -
  • DOI: 10.1177/2050312118756662
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 肥満者における皮膚神経線維の形態変化とそのメカニズム解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 槇原弘子, 大山亜希子, 堀井麻里子, 木田真胤, 赤瀬智子
  • 学会等名: 第38回日本肥満学会
• [学会発表] 肥満者に対する最適な経皮的与薬方法の検討－皮膚内シトクロムP450発現変動の検証－ (2017)
  • 著者名/発表者名: 前澤美香, 槇原弘子, 伊吹愛, 赤瀬智子
  • 学会等名: 第5回看護理工学会学術集会
• [学会発表] 肥満に対する疼痛看護ケア方法の開発①－肥満モデルマウスを用いた皮膚神経線維の基礎的検討－ (2017)
  • 著者名/発表者名: 大山亜希子, 堀井麻里子, 槇原弘子, 伊吹愛, 赤瀬智子
  • 学会等名: 第5回看護理工学会学術集会
• [学会発表] 肥満に対する疼痛看護ケア方法の開発②－ヒト検体を用いた基礎的検討－ (2017)
  • 著者名/発表者名: 堀井麻里子, 大山亜希子, 槇原弘子, 伊吹愛, 赤瀬智子
  • 学会等名: 第5回看護理工学会学術集会
• [学会発表] 肥満糖尿病者の皮膚生理機能の評価と皮下脂肪蓄積の影響 (2017)
  • 著者名/発表者名: 伊吹愛, 豊崎由紀子, 相羽美咲, 槇原弘子, 柴田恵理子, 寺内康夫, 赤瀬智子
  • 学会等名: 第24回日本未病システム学会学術総会
• [学会発表] 便秘治療に対する酸化マグネシウム服用の実態調査 (2017)
  • 著者名/発表者名: 赤瀬智子, 伊吹愛, 槇原弘子
  • 学会等名: 第27回日本健康医学会総会
• [学会発表] 肥満者における薬物代謝酵素の発現変動－肥満を考慮した経皮的薬物投与を考える－ (2017)
  • 著者名/発表者名: 坂元一早, 前澤美佳, 槇原弘子, 伊吹愛, 赤瀬智子
  • 学会等名: 第27回日本健康医学会総会
• [学会発表] 肥満によるCYP3A4とその転写因子の発現変動に関するヒト皮膚組織を用いた解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 前澤 美佳, 坂元 一早, 槇原 弘子, 伊吹 愛, 嶋田 努, 崔 吉道, 赤瀬 智子
  • 学会等名: 日本薬学会第138年会
• [学会発表] 表皮におけるシトクロム P450 の BMI 上昇に伴う発現変動 (2017)
  • 著者名/発表者名: 坂元 一早, 前澤 美佳, 槇原 弘子, 伊吹 愛, 嶋田 努, 崔 吉道, 赤瀬 智子
  • 学会等名: 日本薬学会第138年会