研究課題/領域番号 |
17H04433
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
真嶋 由貴恵 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (70285360)
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研究分担者 |
石亀 篤司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60212867)
前川 泰子 香川大学, 医学部, 教授 (60353033)
嶌田 聡 日本大学, 工学部, 教授 (90713123)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セレンディピティ / 採血技術 / 暗黙知 / 看護実践知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,従来実施されている看護技術方法に創意工夫を加え,新たな臨床看護実践知の創造を容易にするために,セレンディピティ(思わぬものを偶然に発見する,ひらめくことのできる能力)を誘発できるような看護技術学習モデルを構築することである.そのために,①開発済みの「看護実践知」映像データベースを充実させ,②それらから創意工夫が必要な部分(例:類似シーン)を容易に抽出・解析できるようAI(人工知能)技術を活用したシステムを開発した上で,③セレンディピティの誘発と新たな看護技術方法の創出効果を評価することである. 平成30年度は「看護実践知」映像データベース・査映システムの運用を行ないつつ,前年度から引き続きセレンディピティ誘発型学習モデルおよび類似映像シーン抽出アルゴリズムとプロトタイプシステムについて検討した.検討にあたり,どのようなときにセレンディピティが出現するのかについて,明らかにすることが必要となったことから,新たに「セレンディピティ度」を定義し,臨床看護師を対象に調査を行ったうえで,血管難易度別の採血技術実施実験を行い,採血の成否と技術改善状況,脳波や脳血流量,視線などの生体データの測定,ならびにその時の思考について調査を実施した.データ分析の結果,セレンディピティ度を測定することの可能性が示唆された.また,採血技術の成否によって脳血流量や脳波の変動や視線の動きに特徴がみられたことから,セレンディピティの出現の有無についての評価項目を設定できる可能性も示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
セレンディピティ誘発型学習モデルを検討するにあたり,どのようなときにセレンディピティが出現するのかについて,定義することが必要となった.そのため,採血技術における血管の難易度から臨床看護師の創意工夫をする様子を観察し,脳波や脳血流量,視線の動き,血管の同定方法,血管への針の刺入補助指の圧力などの測定値との関連性を分析することとした.一方で看護師個人の日常的な思考態度などから「セレンディピティ度」を定義し,調査票を作成し臨床看護師を対象に調査を実施した.現在,測定した複数のデータ間の関係性について,セレンディピティそのものを多角的な視点から分析を進めているところである.これらの結果をもとに学習モデルを確定しプロトタイプの開発を行う予定である.また,過去の映像データベースから創意工夫が必要な部分(例:類似シーン)を抽出・解析できるようなAI(人工知能)システムについて,現状では適切なものが見当たらないことから引き続き調査を続けることとする.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,看護技術の学習において,セレンディピティの誘発を促す学習モデルを確定し,プロトタイプシステムの開発と評価を行う予定である.そのために,昨年度に取得した看護師の採血時の様々なデータ(脳波や脳血流量,視線の動き,血管の同定方法,血管への針の刺入補助指の圧力など)を多角的に分析し,どのようなときにセレンディピティが出現するのかについてさらに明らかにする.その結果をもとに,セレンディピティ誘発型学習支援の可能なプロトタイプシステムの開発を行う予定である.対象とする看護技術を複数にすると,関連要因が多様になるため,採血技術に限定して行うこととする.過去の映像データベースからの画像判定については適切なAIシステムを引き続き調査検討していくが,並行して手動で必要な映像シーンを抜き出し,システム上で提示できるように工夫する.
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