研究課題/領域番号 |
17H04443
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
植木 純 順天堂大学, 医療看護学研究科, 教授 (50203427)
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研究分担者 |
佐野 恵美香 杏林大学, 保健学部, 講師 (10404930)
高谷 真由美 順天堂大学, 医療看護学部, 先任准教授 (30269378)
和田 裕雄 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50407053)
池田 恵 順天堂大学, 医療看護学部, 先任准教授 (50514832)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アプリケーション / ICT / セルフケア / 行動変容 / 慢性病看護学 / 気管支喘息 / 慢性心不全 / 手術部位感染 |
研究実績の概要 |
最適なセルフケア支援システムを追求することは、患者、家族のQOLを維持し、疾病の重症化を予防する上で重要である。臨床の場では、セルフケア支援におけるICTの導入が加速しているが、”ICT 生産性パラドックス”という国際的な懸念がある。ICT が本来持つアクセスのしやすさ、情報共有等の利便性のみが強調され、実際にはユーザビリティが悪い、膨大な開発・維持コストに見合った効果が出ない、省力化をもたらさずに医療者の負担が増大するパラドックスである。本研究の目的は、多職種からなるチームを編成、それぞれの専門性や臨床経験を反映させたケアプラン、アルゴリズム等を協働で作成して、継続した個別化支援を行う気管支喘息、慢性心不全、大腸がん手術部位感染(SSI)を対象とした新世代のモバイルアプリケーションを開発し、新しいセルフケア支援システムを構築することである。セルフケアプロトコール、モバイルアプリケーションのコンセプトデザイン作成から着手、手術部位感染(SSI)は英語版として在院日数の短い英国でノッティンガム大学共同研究者と作業を行っている。平成30年度は、アルゴリズムやハイビジョン動画を含むコンテンツを作成しながらモバイルアプリケーション作成作業を継続し、今年度は、モバイルアプリケーションを完成させ、臨床試験の準備を行う。モバイルアプリケーション自身がoff-lineでのデータ処理や人間の音声で双方向性のコミュニケーションを行うシステムは、ウェブ等を用いる遠隔診療システムに比較して、費用対効果比の高い介入手法であり、自宅、病院内、介護施設等介入の場の制限も受けない。個別化されたセルフケア支援を行う革新的なモバイルアプリケーションを医療チームの一員として臨床導入することは、わが国のセルフケア支援を最適化して、患者、家族のQOLの維持し、疾病の重症化予防に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に気管支喘息、慢性心不全のセルフケア、大腸がん(結腸・直腸がん)開腹術を対象とした手術部位感染(SSI)予防のためのセルフケアプロトコール、モバイルアプリケーションのコンセプトデザイン(気管支喘息はスマートフォン、慢性心不全・手術部位感染(SSI)はタブレット端末を使用)やモバイルアプリケーションのパーツを研究者らで、また業務委託下にプログラマーと作成した。手術部位感染(SSI)に関しては、英国ノッティンガム大学共同研究者と共同で英語で作成、英国ナースや患者等のイラスト作成や、消毒薬を使用したシャワー方法等のハイビジョン動画を業務委託下に作成した。平成30年度も研究者らがプログラマーと毎週定例のウェブミーティングを開催し、作成を継続して行った。気管支喘息では、喘息ガイドライン2018を反映したケアプロトコールへの修正、セルフモニタリングアルゴリズムの作成、e-diaryのプロトタイプの改善・更新、吸入器、検査、在宅機器(ピークフローメータやHOTなど)に関するハイビジョン動画を業務委託下に作成、ナレーション収録も加えて行った。手術部位感染(SSI)に関しては、コンセプトデザインを術前、術後入院中、術後退院後の3段階、昼夜で6段階に自動で変化し支援するように修正、完成させた。複雑に機能するため、プログラマーによる作成や動作確認等、膨大な時間を要し、来年度も継続して完成させる。慢性心不全では、心不全兆候を早期に評価、対応方法を提示、さらに身体活動性を向上させ健康状態を改善させるアルゴリズム、教育コンテンツや飲水量チェックをするコンテンツ等よりの構成とした。平成30年度はモバイルアプリケーションによるパイロット試験の準備に着手する予定であったが、上記の作成、特に手術部位感染(SSI)モバイルアプリケーションの開発等に計画以上の時間を要し、研究計画の進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は平成29、30年度作業を継続して行う。気管支喘息、慢性心不全、手術部位感染(SSI)を対象として、様々なセルフケア支援および支援の個別化に必要なモバイルアプリケーションのアルゴリズムやデザイン等を完成させ最適化するために、研究者らとプログラマーによる毎週定例のウェブミーティングを継続して開催しながら、プログラマーとのディスカッションや研究者らの学術的な提案、指導を行う(業務委託下)。すべてのモバイルアプリケーションはセルフアセスメントスキルの向上や双方向性のセルフマネジメント教育に加えて、助言や賞賛、行動計画の提示等、行動変容への介入を行う仕様とする。コンテンツに追加するデジタルイラストやハイビジョン動画、ナレーション音声ファイルは研究者らが原画、台本等を作成し、監修下に業務委託下に作成する。一方で、モバイルアプリケーションを用いる介入、mHealthには、有用性のエビデンスの構築がほとんどなく、大半は作成した後に長期的に使用されないのがグローバルな現況である。本年度は、気管支喘息、慢性心不全モバイルアプリケーションを用いた臨床試験(パイロット試験)の準備を開始し、倫理審査等の終了したものから臨床試験を開始する。手術部位感染(SSI)に関しては英国でのクリニカル・ナース・スペシャリストによるモバイルアプリケーションの評価を予定し、臨床試験に必要な修正や、倫理審査の準備等を開始し、臨床的な有用性のエビデンスの構築に取り組む。
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