研究課題/領域番号 |
17H04448
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 眞知子 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (80179259)
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研究分担者 |
小川 真寛 京都大学, 医学研究科, 助教 (00732182)
山口 未久 京都府立医科大学, 医学部, 助教 (20771132)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アイトラッカー / コミュニケーション能力 / 視線分析 / 重症児 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来よりも正確度、精度が高く、安全性が保障された、より信頼性の高い注視点データを取得できる600Hzのアイトラッカー装置を用い、健常児(者)や身体障がい児(者)とのデータ比較により、重症児の意思疎通のあり様を解明することを目的とした。今年度は研究3年目であり、主として、1.健常児(者)、肢体不自由児(者)、重心児(者)を対象とし、注視している点と静止画像との関連性を検討した。2.重心児(者)、重度身体障害児(者)、健常児(者)を対象とし、アニメーション動画の追視に注目し、動体検出の位置と視線位置、動画像処理における顕著度マップの点数との関連性を検討した。3.結果のまとめと発表:学術誌2編、学会発表2編を行った。その中の1編が「日本メディカルAI学会奨励賞」を受賞した。4.直接介入:得られた結果を活用し、脊髄性筋萎縮症1型、中学1年生女児1名を対象として、次のような目標の基、前年度までに得た知見に基づき、重度障害児の視線活用の特性を生かした京都と愛知県との遠隔地学習支援環境モデルを構築した。具体的には、「はいもいいえも分からない重度障害児にどう教えたら良いのか分からない」と困難を抱えている教員や保護者にその方法を提案した。子どもには、身近な場所で学習支援をするものがいない中、遠隔地からインターネットを介し、これからの生活で必要な漢字や言葉を増やす機会を提供した。次年度も引き続き同様の支援を行い、最終的には子どもが家庭や学校で自立的な運用ができるよう視線活用に特化したより質の高い遠隔地学習支援方法を提案する。また、重度障害児への学習環境に関する現状・問題点を明らかにし、工夫や遠隔地からでも可能となる支援法を、他の障害児にも応用ができないかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究目標は、重症児の特徴を捉えたコミュニケーション支援を目指し、静止画像を対象物とし、600Hzのアイトラッカー装置を用いてコミュニケーションのありようを解明することであった。具体的に行ったことは、1.対象者を健常児(者)、肢体不自由児(者)、重症児(者)とし、各群の注視点と静止画像との関連性を、テキスト部分の注視特性、静止画像の顕著度と注視特性、色ごとのエリア注視割合から検討した。2.アニメーション動画を見せた際のより多くの重症児の視覚的な特徴を、アイトラッカーにより収集されたデータと動画像とを解析し、重心児者と健常児者とを比較することでの探索と、視線の動きの数値化を用いた客観的評価の提案をした。2.アニメーション動画を見せた際の視覚的な特徴を、重心児、重度身体障害児、健常児を被検者として、アイトラッカーで収集したデータと動画像とを比較解析し、客観的な評価指標の探索を行った。それらの成果をまとめ、誌上発表2件、特に社会的に注目されているAI学会で2件発表し、学会奨励賞を受賞できたことは、当初の計画以上に研究が進展していることを反映している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究や支援経験から、医療ケア児の入学を求める訴えに関するインタビューを受け、そのコメント記事がNHK news web:https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20200318/)に掲載された。これをきっかけとし、重度障害児が置かれている環境を、広く社会に伝え、障害児者の今後の環境改善の一助となるように情報発信していく予定である。また、結果の未発表部分を整理し、幅広く社会に伝えていく予定である。未発表として残している2つの課題、1.静止画像と動画像を見た時の注視特性の比較、2.社会性を表す注視特性と、関係形成の基盤となる目を見て視線を合わせることについて、重症児の特性を静止画像と動画像から導き出すこと。これらの結果とそれ迄の結果を、直接介入した経験とも照合することで、研究目的を達成していく予定である。 ..
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