研究実績の概要 |
本研究では重度知的障害をも有するprofound intellectual and multiple disability (PIMD)患者を含めた重度身体障害者のアイトラッキングによる視線パターン分析と客観的評価手法の開発を行った。PIMD患者(35人)、PIMD患者を除く重度身体障害者:SPD患者(19人)、健常者(48人)の計102人の対象者が動画を視聴した。 本研究では、従来から用いられている視線取得有無を評価する方法に対して、新規に(1) 動画中の視覚認知に特徴的な部分を指標化する3つのsaliency map(Spectral Residual(SR), Fine Grained(FG), Motion Saliency(MS))に基づき視線位置をスコア化する方法(Saliency score: それぞれFG score, MS score, SR score)、と(2) 動体物と視線位置の関係をスコア化する方法(Distance score)を提案し、それぞれ動画内の物体への視線反応性、および動画内の動体物への追視の程度を分析した。 3つのSaliency scoreにおいて、動画全体では健常者とPIMD/SPD患者の群間で統計的有意差を認めた(p < 0.05)。シーンごとではMS/SRスコアと比較してFGスコアがPIMD/SPD患者の視線位置をより多くのシーンでスコア化に有用であった。また、Distance scoreにおいて、動画全体ではPIMD患者、SPD患者、健常者のすべての群間で統計的有意差を認めた(p < 0.05)。シーンごとではDistance scoreを用いることによりPIMD/SPD患者で、患者ごとに反応しやすい速度がある可能性が判明した。動画内の物体への視線反応性と動画内の動体物への追視の程度を評価できることが明らかになった。
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