研究課題/領域番号 |
17H04451
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
佐東 美緒 高知県立大学, 看護学部, 准教授 (20364135)
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研究分担者 |
高谷 恭子 高知県立大学, 看護学部, 講師 (40508587)
有田 直子 高知県立大学, 看護学部, 講師 (70294238)
田之頭 恵里 高知県立大学, 看護学部, 助教 (90758905)
益守 かづき 久留米大学, 医学部, 教授 (20238918)
瓜生 浩子 高知県立大学, 看護学部, 教授 (00364133)
大川 宣容 高知県立大学, 看護学部, 教授 (10244774)
井上 正隆 高知県立大学, 看護学部, 講師 (60405537)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療的ケア / 在宅療養 / 協働支援プログラム / 災害 / 小児看護 |
研究実績の概要 |
本年度は、災害弱者である子どもを対象として設立されたNPO団体に協力を得て、大学全体で取り組む地震発生時の災害訓練に参加していただいた。この時は、呼吸器管理が必要な方、吸引や胃ろうの管理が必要な方、車いすやバギーを用いて移動される方、発達障害を持つ方など、日頃、災害訓練に参加したことのなかった方々に参加していただくことによって、実際に参加した感想や、実際に避難した時に感じた困難感について意見をいただくことができた。その他には、小児看護専門看護師で、熊本地震の際に、医療的ケアが必要な子どもや家族の支援に実際関わった方や、特別支援学校に通学する子どもの家族10名とブレーンストーミングの手法を用いて意見交換を行った。 ご家族は、6歳から16歳までの子どもを育む母親であった。家族は、《自宅から避難所への車いすでの避難距離の問題があ(る)》ったり、《きょうだいとともに避難する必要がある》にもかかわらず、《自宅の近くに訓練参加を支援してくれる人がいない》、《近所に高齢者が多く支援を頼めない》という状況があった。また、普段の生活の中で、〈じっと見られることで視線を痛く感じ(る)〉、《周囲の目を意識(する)》して、《子どものことをより分かってくれる場所に避難したい》とも考えられていた。子どもの避難には、ベッドや障害者用トイレなど、《避難所に特殊なものが必要である》場合もあるが、〈子どものことを理解してもらう機会が少ない〉ことなどから、意見を汲み取ってもらえず、《障がいのある人が地域の訓練に参加する環境が整っていないと感じる》ことが多いとも語っていた。避難訓練に参加しないことによって、《実際にどのような避難となるかがわからない》ことから対策が進まず、《子どもを助けるために人と顔見知りになる必要性を感じる》にもかかわらず、現状としては《発災時に籠城せざるを得ない環境がある》と考えていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、高知県に住む医療的ケアが必要な方や、特別支援学校に通学する子どもの家族、災害弱者である子どもを支援するNPO法人、災害訓練に参加した方へのインタビューや意見交換を通して、医療的ケアが必要であったり、在宅療養中の子どもと家族の災害への備えに関する課題や問題点について、明らかにすることができた。 災害訓練への参加は、当初予定していなかったが、障がいを持つ子どもの家族と関わる中で、災害訓練に参加したいが機会を持つことができないという意見を聞き、当日のボランティアや教員、医療者の協力を得て、実施することができた。実際に経験することで、予想しなかった事態が発生することや、発達障害をもつ子どもへの支援も必要なこと、医療的ケアが必要ではないが、移動手段として車いすやバギーを使用する方への配慮も必要であることなどが明らかになり、実施したことで大きな成果が得られたと考えている。また、高知県は津波被害が予測され、大学でも浸水することが考えられるため、どのような避難誘導が必要か、具体策を考える一助ともなった。 しかし、被災地に住む医療的ケアが必要な子どもと家族については、文献検討を行うにとどまった。また、専門職者へのインタビューについては、熊本地震の際に、実際に活動を行った小児看護専門看護師へのインタビューはできたが、高知県内の専門職者や、他県の専門職者へのインタビューは実施できなかった。 研究協力者の意見として、県や市町村の取り組みが見えづらいという意見もあったため、今後は行政や病院についても、その取り組みについて明らかにしていく必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究当初、プログラムは、「医療的ケアが必要な在宅療養中の子どもと家族の災害に備えた協働支援プログラムの開発」を目指していた。しかし、実際に意見交換を行うと、医療的ケアは必要ないが、発達障害や脳性麻痺などによる障がいをもつ子どもを育む家族も、災害に関する対策に大きな課題を抱えていることが明らかになった。医療的ケアに限らず、このように通常の避難所での生活に困難を抱える可能性のある子どもや家族が、いかに減災に取り組むことが出来るかが、大きな課題であると考えた。本プログラムは、このような対象者にも活用できるものが有効ではないかと考えている。また、熊本地震を体験した専門職者の意見として、発災直後は、障がいを持っていても、特別な支援が得られるわけではなく、子どもが最善の環境で過ごすことができるように、いつもともに過ごし、子どものセルフケアエージェンシーを把握している家族が、どのように環境を整えていくかが課題となると語られていた。意見交換では、不便だったこと、不足していたこと、医療者やボランティアへ依頼したいことなどは語られていた。一方で、子どもの身体的特徴を専門職者に伝えることが難しかったり、どのような支援が必要かを積極的に話すことが難しい状況もあった。減災には、子どもの身体的不調を減らすことも含まれ、家族の持つ力が最大限発揮されるようなツールの開発なども必要だと考えた。実際に避難訓練を行うことで、具体的な協働支援プログラムの内容も検討できたので、今後の研究に生かしていきたいと考える。
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