6つの看護系大学に所属する保健師学生(以下、学生)240名および1都道府県の行政保健師(以下、保健師)457名を対象とし、ノミナルテクニック法を用いて精選した健康危機管理に関する実践能力17項目(以下、実践能力項目)が向上するかについて、制作した健康危機管理に関するICT活用教材(母子健康手帳交付場面および防災対策検討場面)を用いた学習効果の評価を行った。 実践能力項目に関する調査協力者は、動画視聴前(学生n= 32;保健師n= 61)、1回目の動画視聴後(学生n= 20;保健師n= 22)、半年後以上の期間後の2回目の動画視聴後(学生n= 2;保健師n= 1)であり、フェイスシートと突合できた有効データは、学生n= 30(2年n= 1;3年n= 9;4年n=20)、保健師n= 56(保健師経験年数17.2±11.97年)であった。 実践能力項目の自己評価は、3時点ともに保健師に比べ学生の方が低く、特に「過去に所管区域内で発生した健康危機の発生頻度、規模、位置、期間等を把握している」は低値であった。学生、保健師ともに、動画視聴前と1回目の動画視聴後の自己評価の差異は、特に「住民とかかわる中で、健康危機等に関する情報が含まれていないかどうかを意識できる」「国、都道府県などの上位組織の法令やガイドラインに基づいて、所属組織の健康危機管理マニュアルが作られていることが自分の言葉で表現できる」は、高い評価に転じる伸び率が大きかった。一方、「個人情報に配慮した記録や情報の管理ができる」「非常時において、いつ・だれに・何を報告・連絡・相談すべきか自分の言葉で表現できる」「健康危機管理に関する研修や模擬訓練等に参加している」「健康危機管理に必要な医薬品や器材等の正しい使用方法を知る必要性について自分の言葉で表現できる」の4項目は、ほぼ変化が認められない、あるいは若干低下する傾向があった。
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