研究課題/領域番号 |
17H04468
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中谷 久恵 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (90280130)
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研究分担者 |
津田 紫緒 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (00402082)
藤田 麻理子 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (70754563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 産業看護 / 家族支援 / 学習ニーズ / eラーニング / 教育プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、産業看護での家族支援の支援技術を明らかにし、産業看護職への家族支援教育プログラムを開発することである。2017年度からの国内外の文献調査と海外視察からインタビューガイドを作成し、2019年度には事業所に勤務する産業保健師11名への半構造化個別面接により、保健師の家族支援17技術を帰納的に明らかにした。2020年度には産業看護研究会に所属する看護職374名を対象に、家族支援への関心と学習ニーズ、17技術の実践状況について調査した。学習ニーズは看護師・保健師国家試験で出題される家族看護に関連する理論を7項目にまとめて提示し、現任教育で学びたい項目を尋ねた。分析方法は家族支援への関心と学習ニーズを属性や職場環境とでカイ二乗検定およびノンパラメトリック検定により比較した。解析はSPSS Ver26を用い、有意水準はP<0.05(両側)とした。倫理的配慮は所属大学疫学研究倫理審査委員会の承認(第E-2028号)を得た。回収は133人(回収率35.6%)からあり、家族支援の関心は「ある」117人(88.0%)が8割以上で、関心の有無は属性や職場環境での差はなかった。学習ニーズは127人(95.5%)の9割以上が7項目のいずれかを選択していた。支援技術は欠損値がない120人を解析し、最尤法バリマックス回転による探索的因子分析の結果から15項目3因子の因子構造が得られた。各因子は、第1因子が【家族が関連する健康問題の顕在化】、第2因子が【健康問題の解決に向けた従業員と家族への関与】、第3因子は【地域の社会資源を利用した健康問題の改善】であった。この3因子の概念と横断調査での家族支援学習ニーズの結果から、家族発達理論を取り入れた映像教材に焦点を絞り、映像のコンテンツを制作して2コースからなるeラーニングシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年2月から調査対象地区の中国地方、四国地方の各県を廻り、調査依頼をさせていただく予定であったが、COVID-19の感染拡大により調査依頼が大幅に遅れて6月から9月にアンケートの配布が行えた。企業のオンライン業務により紙媒体での配布が困難となった県もあり、WEB調査を併用して、どちらか希望する1つの方法でアンケートに回答するよう依頼した。しかしながら目標のサンプルサイズには届かず170人には到達しなかったが、探索的因子分析の結果からは、帰納的に導いた構造に類似する家族支援の教育モデルの骨子となる主要因子が得られた。15項目の家族支援技術は、従業員や家族が抱える健康問題を顕在化させる第1因子、従業員と家族の双方へ関わる第2因子、地域の社会資源へつなぐ第3因子の3つに集約された。これらからは家族を単位とした援助や公衆衛生看護技術の専門性の特徴がうかがえた。さらに記述統計からの追加分析では、家族支援の理論の枠組みで選択が最も多かった家族ストレス対象理論やアセスメントの方法、家族発達理論など、基本的な家族理論のニーズが50%以上を越えていることが明らかになり、今後の教育モデルの方向性が定まった。この3因子の概念と横断調査での家族支援学習ニーズの結果から家族発達理論を取り入れた映像教材に焦点を絞り、新たにイラスト映像を加えたコンテンツを制作して、2コースからなるeラーニングシステムで10月初旬に看護職12人への試行を実施した。その結果、介入前後の比較で家族支援技術得点は終了後に有意な高得点を示した。本年度内に本調査を行うフィールドも横断調査の協力機関ですでに得られており、今年度末の2月~3月に18人のeラーニングデータを収集した。次年度の調査と合わせ、40人の受講データの収集を目指す。その後に最終コンテンツを微修正し、終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでADDIEモデルに基づいて2017年度から家族支援の文献調査とインタビュー調査を行い、家族看護教育モデル案を仮作成し、これらの結果が一般化できるかを産業看護職への横断調査で検討した(分析)。この結果をもとに、2020年度には研究用ホームページを開設し(設計)、e ラーニングの教材制作と学習システム用の教育環境のサーバを整備して(開発)、教育プログラムのパイロットスタディを実施した(実践)。最終年となる2021年度には、これらの実践データを分析し、教材の修正とシステムの課題を検討したうえで、教育方法の有効性を検討する。すでに、2020年度末に、教育モデル案に基づく実践を18人の産業看護職が受講している。モデルの検証を行うにはサンプル数が不足していることから、追加として20人のデータ収集をする。データの分析は、受講者の基本情報(年齢、経験年数)、投稿された学習内容の投稿文を分析し学習目的の到達状況から教材の評価を行う。さらに、受講者のサーバへのアクセスデータから学習時間やアクセス方法をまとめ、アンケートの結果からICT教育による利便性やICT活用の有益性とeラーニングの受講の満足度をふまえた教育的視点での総合評価を行う。開発を支援していただいたエンジニア側からの参考意見も聴取する。 実施者のデータ分析と学習モデルの最終案が完成したのちは、この教育プログラムをCDでのメディアやホームページ上でオープンにし、一般公開を行って受講者と評価者を増やし、看護師や保健師からの教育評価を受ける。以上の2つの研究方法をとおして、5年間の調査報告書を制作し、本研究のまとめを製本する。
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