研究課題/領域番号 |
17H04470
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
丸谷 美紀 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (50442075)
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研究分担者 |
高瀬 佳苗 福島県立医科大学, 看護学部, 教授 (20455009)
上林 美保子 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305256)
奥田 博子 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (50294236)
原田 奈穂子 宮崎大学, 医学部, 教授 (70637925)
安齋 由貴子 宮城大学, 看護学群(部), 教授 (80248814)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 文化看護 / 災害保健活動 / 環太平洋 / 島嶼国 |
研究実績の概要 |
本課題は日本、フィリピン、ニュージーランドの3つの環太平洋島嶼国において、保健師が地域の文化に即して、どのように全人的に災害時に活動するかを調査しモデルを構築することを目的としている。2017年度は日本において、地震・津波・豪雨に関して、被災地保健師・住民・応援保健師に対して調査を行った。 2018年度は、2017年度の日本における調査結果を、被災地保健師・住民・応援保健師という対象ごとに分析した。その検討結果を踏まえて、保健師の行為と意図を分けて分析をしたところ、保健活動自体は従来の災害保健活動に加えて、ニーズ抽出や安寧のための行為が多く見られた。また、文化の内容は従来の文化看護の項目と類似していたが、災害周期の時期に応じて文化の影響が変化していることが明らかになった。 上記の結果を踏まえて、フィリピンタクロバン及びサマールにて、スーパー台風の被災に関して、被災地保健師・住民・応援保健師に対して調査を行った。タガログ語の翻訳が遅滞しているため、分析は途中経過であるが、日本の結果と類似する点と、異なる点が見受けられた。例えば、台風が通過し避難所から街の復興に出向く際に、最初に教会をたてなおした、というスピリチュアルな点は、日本においても位牌の持ち出し等において見られたが、スピリチュアルなよりどころの強さは語られていなかった。また、復興において、自給自足で通貨を用いない集落の復興のために、裁縫や農業などの労働力と農作元の物々交換などの工夫が見られた。日本においても生きがい対策としての農作業をや伝統工芸品づくりああったが、生計維持の意味合いは薄かった。 以上、分析過程ではあるが、文化の項目に「貨幣価値」「スピリチュアルケアのコミュニティ」が新たに加わる見通しである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属先が変更したため、倫理審査を再度行う必要が生じた。その後、フィリピン大学での倫理審査を受ける必要があり、臨死審査承認まで時間を要し、11月に承認された。その後、フィリピンでの調査日程や調査地域の調整を開始したため、フィリピンでの調査が遅れた。 しかし、その間に、8月に国内研究者との航海検討会を再差し、2月には国外研究者を招聘して公開検討会と隣地視察を行った。その結果を踏まえてフィリピンの調査に臨むことができたので、調査開始時期は遅れたが、より質の高い調査となったと思われる。 しかしながら、フィリピンでの調査が2月下旬から3月上旬となったため、予算執行等の問題もあり、タガログ語の逐語録作成が滞っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度の日本における調査結果について、2018年度の専門家会議を踏まえて再検討した成果について、2019年度に開催される各種学会で公表する。学会等の場で意見交換を行い、さらに内容の精錬を図る。 次に、2018年度後期(2019年2月下旬~3月)に行ったフィリピンでの調査結果について、被災地保健師、住民、応援保健師の各調査対象に関して、地域の文化がどのように考慮されて活動を展開されたか、各災害周期ごとに暗黙知を抽出し、分類整理する。分析結果を、日本での隣地調査結果と対比し、類似点と相違点を検討すし、各国のモデルと共通モデルの素案を検討する。 上記2点と並行して、ニュージーランドでの調査を行う。隣地共同研究者の協力を得て、ニュージーランドでの調査対象の選定、調査時期、調査地域等を厳選する。そのうえで、被災地保健師、住民、応援保健師の各調査対象について、地域の文化がどのように考慮されて支援が展開されたか、インタビューガイドに基づいて調査を行う。調査したデータを分析し、暗黙知を形式知に変換し、ニュージーランドの文化に即した災害時保健活動モデル案を作成する。
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