研究分担者 |
O.A Siaw 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人語学教員 (10293549)
渡邉 泉 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30302912)
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
多羅尾 光徳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282802)
熊田 英峰 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (60318194)
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研究実績の概要 |
これまで下水マーカーの調査例の無かったイランにおいて調査を行った。2018年7月にテヘランの18地点で表流水を採取した。化学分析用の試料は現地の研究室でろ過し, ろ液を固相抽出し,カートリッジを、ろ液を一部と共に、冷凍保存し,日本へ持ち帰った。日本の研究室において合成甘味料4種と抗生物質26種をLC-MS/MSにて分析した。合成甘味料と抗生物質はともに14/18地点で有意に検出され,山岳地帯の渓流である上流の4地点では検出されなかった。一方下流の都市域ではどちらの成分も高濃度であった。合成甘味料4成分中ではアセスルファム (ACE) の検出頻度が最も高く(14/18地点), 下流域ではACEに加えて, サッカリン, シクラメートが同程度の濃度で検出された。また、ACEの濃度と糞便性大腸菌の数との間には良い相関がみられた(r = 0.756, p = 0.0011) (図2)。抗生物質については, キノロン類, 特にシプロフロキサシンが高い割合で検出され, 腸球菌感染症等に対する日常的な使用が反映されていると考えられた。抗生物質濃度と糞便性大腸菌の数との間にも良い相関がみられた。 微生物マーカーとしてヒトふん便に特異的に見いだされる細菌 Bacteroides doreiの16S rRNA 遺伝子数の計測を行った。B. doreiの16S rRNA 遺伝子数は、テヘラン市内および近郊の試料水ではACE濃度との間に強い相関が認められたことから,B. dorei は人ふん便汚染の指標として有効であると考えられた。また,ACEが検出限界値以下であった地点からも B. dorei マーカ遺伝子を検出できたため,B. doreiがより鋭敏なふん便指標として利用できる可能性も示唆された。今後他のマーカーの測定、他の地域での観測が必要である。
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