研究課題
近い将来、人間の早期死亡をもたらす最大の環境要因は大気汚染となり、その中でも特に粒子状物質(エアロゾル)によるものが最も深刻となることが予測されている。特に世界人口の約6割を占めるアジア地域において、人間の生活の質に直結する呼吸器系や免疫系に対する粒子状物質のリスクに係る信頼性の高い科学的知見の蓄積が求められている。本研究では、申請者が独自に開発したサイクロン式大気粒子状物質大量採取装置により得られた粒子中の化学分析と生体有害性評価実験を行い、インド・中国・日本における結果を相互に比較することで、各地域特有の粒子状物質による有害性発現メカニズム解明のキーポイントを明らかにすることを目的とする。令和元年度は、インド・中国・日本において採取されたエアロゾルの分析を進めた。西安交通大学(中国・西安市)に独自型サイクロンサンプラーを設置し、PM2.5試料の採取を行った(大気吸引流量1,200 L/min、吸引期間 約2週間)。前年度までに装置の設置を完了したインドと日本を加えた各試料につき、炭素成分および水溶性イオン成分と元素成分の分析を行った。粒子の化学成分分析の結果、水溶性イオン成分においては、日本の試料はインド・中国に比べて有意に高いナトリウムイオン濃度を示し、インドの試料は、日本・中国と比べて有意に低い硝酸イオン・硫酸イオン・ナトリウムイオン・マグネシウムイオン濃度を示した。アンモニウムイオンとカルシウムイオンに関しては中国に対してのみ有意に低い値を示した。中国試料は、日本試料・インド試料と比べて有意に高い硫酸イオン・硝酸イオン・アンモニウムイオン・カルシウムイオンを示した。金属成分に関しては、インドの粒子状物質が日本と比べて、マグネシウム・チタン・バナジウムの濃度が有意に高かった。一方、アルミニウム・リン・硫黄・塩素・クロム・マンガン・鉄・銅・亜鉛は有意に低かった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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大気環境学会誌
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10.11298/taiki.55.27
Aerosol and Air Quality Research
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10.4209/aaqr.2019.01.0016
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https://www.st.keio.ac.jp/education/research/me201803.html