研究課題/領域番号 |
17H04482
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
板橋 英之 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40232384)
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研究分担者 |
森 勝伸 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70400786)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中国 / 土壌 / 重金属 / コメ |
研究実績の概要 |
2017年度に構築したオールインジェクション分析装置を稼働させるため、2018年5月に協力研究員の和田博士と当研究室の博士後期課程学生と共に渡中した。現地では多数の土壌試料を取り扱う必要があったため、日本で作製した1流路システムを改造して、4検体の同時分析が可能な4流路システムを構築した。この装置を用いて、カドミウムで汚染されている江蘇省の水田の土壌について詳細な化学形態分析を行い、米のカドミウム濃度との相関について考察した。その結果、フラクション1のカドミウム濃度とコメのカドミウム濃度との間には正の相関が見られ、土壌中のカドミウムの内、溶出しやすいカドミウムが主としてコメに取り込まれていることが明らかとなった。また、この土壌に当研究室で開発したバーク醗酵材料(FBA)を添加したところ、FBAの添加割合に比例して、コメのカドミウム濃度は減少し、FBAがコメへのカドミウム取込抑制剤として有効に機能していることが確認できた。一方、無錫の水銀で汚染されている水田について調査を行うため、9月に連携研究員の富山大学丸茂教授を訪問し、分析方法について打合せを行った。この結果を受けて11月に丸茂教授と共に渡中し、現地を視察すると共に、過般型蛍光X線分析装置にて、土壌の水銀濃度分布を確認した。また、オールインジェクション分析装置を用いて、土壌の重金属の化学形態別分析を行った。その結果、水銀は水田に広く分布していることが確認され、その化学形態は主としてフラクション4とフラクション5であり、土壌中の水銀はカドミウムと比較して溶出しにくい化学形態で存在していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4試料を同時に分析可能な4流路型オールインジェクション分析装置では、カラムに市販の容器とフィルター(Spelco社製Empty Rezorian チューブキット57609-U)が、ポンプに市販の4流路ペリスタルティックポンプが使用可能であることが判明した。これにより、比較的安価に多くの試料を同時に分析できることが可能となり、中国現地での調査が大きく進展する見通しとなった。また、重金属で汚染されている地域については、共同研究先の中国企業を通して、カドミウムに汚染されている江蘇省の水田で詳細な実験を行うことができ、実際の水田における土壌カドミウムの化学形態とコメのカドミウム濃度の相関性及びFBAのカコメへのドミウム取り込み抑制効果を確認することができた。これにより、土壌のカドミウムの化学形態と米への移行メカニズムについての研究では、実際の水田を使った実験を行うことができ、当初の予定通り重要な知見が得られている。来年度も継続してこのフィールドに於いて実験を行うと共に、更に水銀で汚染されている無錫の水田での実験も可能であることから、今後も順調に調査が行えるものと期待できる。さらに分析方法やデータの解析については、蛍光X線分析に精通している富山大学の丸茂教授と共同研究者である高知大学森教授と連携が取れており、成果の発表に向けて準備を進めているところである。以上の状況から、これまでのところ本研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
水銀で汚染されている無錫の水田での実験の遂行と来年度本格的な実験を行う予定である南京の水田の視察を行うため、2019年5月に和田博士及び当研究室の博士後期課程学生と渡中する。分析については中国靖江市の分析センターにて、4流路計のオールインジェクション分析装置を使った土壌重金属の化学形態別分析とコメの重金属濃度の測定を引き続き行う。また、南京の水田ではカドミウムに汚染されていることが報告されているため、視察の際に土壌試料を持ち帰り、土壌カドミウム含有量の測定を行う。2019年9月と2020年3月に再度渡中し、無錫の水田においてFBAを散布し、コメへの水銀取り込み抑制機能の検討を行うと共に、オールインジェクション装置を用いて、水銀で汚染されている水田の土壌について詳細な化学形態分析を行い、コメの水銀濃度との相関について考察する。さらに、南京のカドミウムで汚染されている水田について、土壌分析の計画を立てると共に、米の栽培に関する打ち合わせを行う。これらの結果を基に、2020年度に調査を行う土壌の選定を行うと共に得られた成果を国内外の学会や専門誌に発表する。2020年度以降につては、さらに汚染が深刻な地域に関して同様の調査を行うと共に、これらの地域で農作物への重金属の取り込みを抑制する方法について提案する。
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