研究課題/領域番号 |
17H04483
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
関口 和彦 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50312921)
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研究分担者 |
藤谷 雄二 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (20391154)
熊谷 貴美代 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 独立研究員 (50391826)
藤野 毅 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70282431)
三小田 憲史 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80742064)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 浮遊粒子状物質 / フィールド観測 / PM2.5 / 連続モニタリング / ナノサンプラー / 粒径別成分評価 / 多環芳香族炭化水素 / 水中微粒子 |
研究実績の概要 |
実施した研究概要 本年度は、モデルフィールドとして選択したハノイ近郊の3大学を訪問し、研究協力関係の構築と観測場所の確保、さらに小型PM2.5質量モニターの設置を行った。また、ナノサンプラーの繊維層フィルターの分割における性能評価に加え、水中PAH成分の分析手法および水中微粒子の画像解析手法の検討も行った。
得られた成果 小型PM2.5質量モニターの連続測定により、ハノイ近郊ではPM25濃度が数十から百数十ug/m3で推移していることが明らかとなった。この濃度変化は観測した3大学で非常に似通った傾向を示しており、安定的に汚染粒子が存在すること、また、この安定粒子に光化学生成やバイオマス燃焼が加わり、地域特性を示している可能性が示唆された。本年度から前倒しで本格的な大気観測が開始できたことから、これら捕集サンプルに対して化学的な成分分析を行い、発生源影響等を明らかにしていく予定である。ナノサンプラーの性能評価においてはPM0.1分級の繊維層フィルターが分割できないため、成分分析の種類が制約されていたが、繊維層フィルターを4分割した新たなカートリッジを開発し、安定にPM0.1を分級しつつも繊維層に成分が安定に4分割できることを示した。また、水中PAHの成分分析に関してはスターバー抽出(SBSE)手法を用いることで、わずか25 mL程度の試料量でng/LレベルでPAHsが分析できる高感度分析手法を確立した。一方、水中微粒子の画像解析手法については標準のブラックカーボン粒子を純水に懸濁させ、その後吸引濾過した後に電子顕微鏡で形状の変化等観察したところ、水に溶けない粒子であれば水中に分散した微粒子でも性状観察ができる可能性が示唆された。今後はハノイ近郊の湖沼等の実サンプルに対して観察を行い、大気微粒子が水中に移行した際に特徴的な性状変化が見られないか観察を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、フィールド観測の実施に向けたサンプラー評価や現地での研究協力体制の構築、さらに適切な集中観測時期を検討しつつ、プレ観測を実施するのが当初計画であったが、現地との協力関係、適切な集中観測時期の把握が予想以上に早期に達成できたことから、予算の前倒し申請を行い、10月のプレ観測を本観測として実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画通り、1年目に実施したプレ観測の成分分析、画像解析を進めるとともに、本年度行う集中観測期間をまず決定する。前述した各種発生源影響を同時に確認できる時期として、二毛作の稲わら燃焼を考慮し、さらに湿度や降雨による凝縮成長や湿性沈着などの挙動を季節別に評価すべく、雨季の5~6月、乾季の10~11月にそれぞれ、2週間程度の集中観測を実施する。期間の詳細は、小型PM2.5質量モニターの通年データを解析するとともに、プレ観測時に各種発生源の排出状況を現地研究者に確認することで決定する。この集中観測期間に大気PM(粒径別捕集)、雨水、表層水を採取し、1年目と同様に成分分析、画像解析を実施し、得られた成分濃度や粒子性状から大気PMの発生源寄与について調査を行うとともに、雨水による大気PMの地表への沈着挙動についても検討を行う。
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