研究課題/領域番号 |
17H04483
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
関口 和彦 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50312921)
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研究分担者 |
藤谷 雄二 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (20391154)
熊谷 貴美代 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 独立研究員 (50391826)
藤野 毅 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70282431)
三小田 憲史 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80742064)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 浮遊粒子状物質 / フィールド観測 / PM2.5 / 連続モニタリング / ナノサンプラー / 粒径別成分評価 / 多環芳香族炭化水素 / 水中微粒子 |
研究実績の概要 |
本年度は、2017年度(1年目)の乾季(10月)に実施した大気観測で粒径別に捕集した粒子状物質(PM)試料に対して、各種成分分析、画像解析を進めるとともに、大気圏から水圏へのPMの移行について、多環芳香族炭化水素(PAH)を指標として評価した。さらに、雨季(6月)と乾季(9月)に継続的な大気観測を実施した。 成分分析の結果として、イオン成分濃度は地殻由来のCa2+やMg2+が粗大粒子で高く、二次生成に起因するNH4+、SO42-, NO3-が微小粒子で高かった。イオンバランスは超微小粒子ではアニオン側に寄っており、水溶性有機アニオンの存在が示唆された。一方で、PM濃度の高い特異日にはイオンバランスが崩れ、NO3-が高濃度に検出される傾向を示した。有機マーカー分析では、バイオマス燃焼由来のレボグルコサンが極めて高い濃度で検出され、有機炭素濃度の変動と一致していた。またプラスチック燃焼由来の成分も同時に増加しており、これら燃焼系発生源の影響を強く受けていることが示唆された。また、気象影響をPM2.5のデータから解析したところ、PM2.5の日変化は深夜から明け方にかけて急激に極大となり、比湿との関連が示唆される一方で、PM濃度上昇には風向も影響することが確認された。 ハノイで採取した雨水中およびPM2.5試料中のPAHsを測定したところ、雨水中からは日本国内よりも高濃度のPAHsが検出された。雨水中PAHsの組成は主として親水性PAHsであったが、有害性の高いベンゾ[a]ピレンなども含まれていた。このことから降雨現象が大気中に存在するPAHsの陸水圏への移行に大きく関与する可能性が示唆された。また、雨水試料中の成分について走査型顕微鏡を用いて画像観察したところ、いくつかの不溶性粒子を観察することができたが、試料に藻状の不純物が付着しており、エアロゾル由来かどうかの識別は困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、2017年度(1年目)の乾季(10月)に実施した大気観測において粒径別に捕集した粒子状物質(PM)試料に対して、各種成分分析、画像解析を進めるとともに、雨季(6月)と乾季(9月)にさらなる集中観測を実施することとなっており、概ねその通り遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画通り、2年目に実施した集中観測の成分分析、画像解析を進めるとともに、雨季の5~6月に再度集中観測を実施し、大気PMの水圏への移行が定常的に起きうるかを再確認する。さらに、これまでのデータを総括し、各成分の濃度や相関関係、さらには統計解析により、二次粒子生成や沈着に与える発生源および降雨の影響をナノ粒子も含め粒径別に定量評価する。最終的にはこれら結果を報告書として取りまとめるだけでなく、現地研究機関との強固な研究協力と活動基盤の確立に向け、大学間協定の締結やシンポジウムの開催など、学術交流の推進を図る。
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