研究課題
本年度はこれまでのデータを総括し、各成分の濃度や相関関係、さらには有機マーカーを用いた詳細分析を行い、越境汚染の影響も含めた総合的な発生源寄与評価を行った。ベトナムハノイ周辺3地点で採取した粒径別PM試料に対し、OC、EC、WSOC、イオン成分の濃度測定を行った。高いPM濃度が観測された日には0.5マイクロメートル以上の粒径において二次生成成分が増加しており、中国からの越境汚染の可能性が示唆された。また、通常日と高濃度日のイオン組成割合から、高濃度日では二次生成が盛んに生じ、燃焼性NOxのガス凝縮も顕著に確認された。この高濃度日の生成機構をより詳細に検証するために、PM試料に含まれる各種発生源の有機マーカー分析を実施したところ、高濃度日にはバイオマス燃焼由来のレボグルコサンとともに、光化学生成由来のコハク酸やリンゴ酸などのジカルボン酸類が増加していた。一方で、その他の高濃度日には、プラスチック燃焼から排出されるテレフタル酸などの増加もあり、ハノイ近郊のPM汚染は様々な発生源を持つ粒子が混在して存在していることが明らかとなった。雨水を介した大気PMの気圏から水圏への移行について、多環芳香族炭化水素(PAHs)を指標として検証した結果、ハノイで採取した雨水中の懸濁成分からは、日本国内と比べてかなり高濃度のPAHsが検出された。特に強い毒性が疑われる5、6環の成分が高い割合を示し、この結果は同時期に採取されたPM2.5試料から検出されたPAHs成分の組成と類似していた。このことは、大気PMの雨水による移行を裏付ける結果であると言える。実際、ハノイで採取した雨水中の成分について走査型顕微鏡を用いて画像観察を行ったところ、野焼き時と非野焼き時で粒子性状(球体、凝集体)が異なっていることが確認され、雨水中の懸濁成分が発生源影響を受けていることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Environmental Science and Pollution Research
巻: 27 ページ: in press
10.1007/s11356-020-09417-5
http://park.saitama-u.ac.jp/~kseki/ksekimain.htm