研究課題/領域番号 |
17H04487
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
多羅尾 光徳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282802)
|
研究分担者 |
林谷 秀樹 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30180988)
及川 洋征 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70323756)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 廃棄物再資源化 / 温室効果ガス排出削減 / 人畜共通感染症 / 熱帯農業 / 水質浄化 / 農村開発 |
研究実績の概要 |
1. バイオ炭を4種類の原料(もみ殻、竹、メラルーカ、ホテイアオイ)から異なる温度(900℃と500℃)で作製し、それぞれのバイオ炭による細菌吸着能を比較した。その結果、次の結果を得た。(1) 4つの原材料ではホテイアオイから作製したバイオ炭による細菌吸着能が最も高かった。(2) 温度別に比較すると、いずれの原料由来のバイオ炭も,900℃で作製したもののほうが500℃のものより細菌吸着能が高かった。(3) 用いた細菌の菌種により細菌の吸着性に差が認められた。 2. メコンデルタおよび周辺地域においてバイオ炭の利用・普及に向けた現地調査を行った。その結果,次の結果を得た。(1) カントー市郊外にある木炭生産の盛んな集落(ハウザン省チャウタンChau Thanh郡フータンPhu Tan村)の生産者に対し、研究協力者のDr. Chiemとともに聞き取りを行った。マングローブ材の資源枯渇からデルタに豊富な果樹の剪定枝・枯死材を用いて木炭生産を継続していた。集落には炭やき窯が密に設置されていることから、大量に放出される炭やきの煙の処理・軽減が直近の課題と考えられた。(2) カンボジア・コンポンチュナン州農村開発事務所にて、バイオ炭・ハイドロゲル施用試験圃場を調査した。栽培されたレタスの収量は、もみ殻くん炭と牛糞の混合施用区において良好な結果を示しており、土壌改良効果・保湿改善効果を評価を加えることで、当該地域の野菜栽培農家を対象にバイオ炭普及を推進できるものと考えられた。(3) ベトナム・ラムドン省、ダラット高原の道路・畑地沿いに繁茂するキク科低木のニトベギクThitonia diversifloraの利用可能性について、テンシン有機農場において意見交換を行った。メコンデルタのバイオ炭資材と同様、農家への普及に向けてはバイオマスの収穫・処理方法に取り組む必要があることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題に従事する予定であったベトナム・カントー大学からの留学生(博士課程)が体調不良により入学を辞退することとなり,本年度予定していた,バイオ炭による栄養塩吸着,および温室効果放出に及ぼす影響の試験を一部,実施できなかったため。.
|
今後の研究の推進方策 |
1. 細菌の菌種による吸着性の違いをより多くの菌種を用いて検討するとともに、ウイルスの吸着性の違いを検討する。 2. 今年度の調査結果から、メコンデルタおよび周辺地域におけるバイオ炭の利用・普及の課題を考察した結果、今後、以下の課題について取り組んでいくこととする。 (1) バイオ炭資材に利用可能な植物バイオマスの検討を行う。CTUで取り組んでいるヤシ殻、もみ殻、メラルーカ、ホテイアオイのほかに、デルタ湿地や氾濫原に繁茂するバイオマスとして、イネ科のヨシ(Phragmites australis) 、ミモザ・ピグラ(Mimosa pigra)、さらに上流域のヒマワリヒヨドリ(Chromolaena odorata)など、いわゆる雑草や低木が利用できる可能性がある。これらのバイオ炭としての特性の解明する。(2) 上記バイオマスを、いかにまとまった量を集め、どのように炭化するか、といった普及に向けた課題についても検討する。減煙・消煙システムの提案に向けて、既存の炭化装置・施設の改良を試みる。(3) 今後の普及に向けて現地の研究協力者との意見交換を進め、バイオ炭を用いた土壌改良材・有機肥料の実証試験に取り組み、地域の特性を踏まえたバイオ炭生産利用システムを提案する。 3. 土壌に施用したバイオ炭の温室効果ガス放出におよぼす影響を検討する。他感作用がありダイズの収量を増やすことが経験的に知られているセイヨウフウチョウソウ(Tarenaya hassleriana) をバイオ炭を混入した土壌にて栽培し,温室効果ガス(二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素)および硫化カルボニルの,土壌からの放出速度を測定し,バイオ炭を混入しない土壌と比較する。
|