研究課題/領域番号 |
17H04492
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
米延 仁志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (20274277)
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研究分担者 |
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
星野 安治 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50644481)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 年輪気候学 / 中南米 / 熱帯収束帯 / 14C Bombシリーズ |
研究実績の概要 |
H29年度は試料の探索・収集を重点課題とした。研究会を開催し,共同研究体制を確認した。予備調査で得た試料(グアテマラ6 点,ペルー5 点)について,木材組織学的観察,年輪幅計測と年代決定を試みた。両地域とも,組織構造や材色によって年輪解析が困難な樹種であったが,年度前半に,パルプ漂白を応用した化学処理法を開発することで,年輪解析,試料調整ともに良好に実施可能とした。グアテマラ産材(Cupressus sp.),ペルー産材(Copaifera sp)について,プレパラート標本を作成し,木部の組織構造,年輪構造の特徴を把握できた。気象データ,植生,フェノロジー等,現地の環境記録と合わせ,ペルー産材の成長輪は年単位で形成されること,すなわち年輪が形成されていることを確認できた。グアテマラ産材については,近年,成長輪が不明瞭になる傾向が認められ,年輪形成の有無を再確認する必要,あるいは樹種を変更する必要があることを確認した。ペルー産材では年輪幅を計測し,年代を決定できることが確認された。この結果を受け,ペルー産材については現地調査を実施し,同樹種で試料の点数を充実させることができた。また,収集した試料全点について年輪幅の計測を完了した。グアテマラ産材では,グアテマラ高地北部に生育する広葉樹材を収集した。収集した試料について,安定同位体測定のための試料調製を実施した。14C Bombシリーズを空間的に充実させるため,過去に収集した本州中部産ヒノキ,屋久島産スギの再解析を実施し,14C測定用試料を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに,試料の収集を行うことができた。ペルー産材では,想定以上に試料点数が充実し,さらに,この樹種が年輪年代学的に有用であるだけでなく,これまでほとんど年輪年代学的研究を実施されていない新規性の高いものであることが判明した。また,年輪幅測定,気象データの整備も完了し,H30年度には,この試料を用いて年輪気候学的な論文纏める目処がたった。これは研究組織に,試料採集地域を知悉する年代学,考古学の専門家の協力が得られたことが大きく貢献している。一方でグアテマラ産材は年輪が不明瞭であり,更に詳細な年輪解析と,異なる樹種での再検討が必要である。そのために老齢樹が発見できる可能性の高い広葉樹材を入手することができた。この樹種の解析をすすめた。安定同位体測定,14C濃度測定を実施するための試料調製法の開発,試料調整も順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標である,中南米熱帯収束帯地域の年輪気候学と核実験期限14C濃度変動の解明を成功させるため最も重要なことは,試料点数を充実させ良質な標準年輪曲線の構築を継続的に行うことである。そのために,H30年度までは中米,南米,両地域とも現地調査を行い,試料の採取を行う。炭素,酸素の安定同位体比を用いた年輪気候学研究,14C測定で時間・労力ともにボトルネックとなるのが,試料の前処理である。本研究組織では,木材組織学を専門基礎として年輪幅のような効率的で従来からの知見の多い方法に豊富な実績のある専門家が,効率的で同位体試料調整の協力体制を整備しており,この体制で迅速なデータ生産を堅持する。また,南米(ペルー)では査読あり論文での成果公開の目処が立っており,中米でもさらなる試料の充実を目指すことで成果を揚げたい。また,最終年度には,両地域,日本でのデータセットを完備した成果を纏める。
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