研究課題
本年度の主な研究活動は、①第2回英国調査、②第3回英国調査、③美術史・文献研究、④研究会、から成る。①前年度の調査に引き続き、第2回目の大英博物館調査を行った(4~5月:安間・申・辻・渡辺・テイラー・ブレアトン・クイン)。博物館地下に置かれた浮彫のほか、ギャラリーの展示品(人面有翼牡牛像・「ラキシュの戦い」浮彫図など)に使われた石材の化学組成を明らかにするため、携帯型蛍光X線分析装置をつかった非破壊分析ならびに帯磁率を測定した。また「ティル・トゥーバの戦い」浮彫図の表面にみえる微化石について撮影を行い、微化石の専門家に意見を求め、大型底生有孔虫Alveolinidae科であることが判明した。種を特定するため、浮彫の試料採取を申請した。調査後、大英博物館へすべてのデータを提供した。②第3回目の英国調査では、大英博物館・アシュモリアン美術館・バーミンガム博物館において浮彫調査を行った(8月:安間・申・渡辺・ブレアトン・コリンズ・鷲津)。大英博物館では、前回までアクセス不可能だった「ティル・トゥーバの戦い」浮彫上段部分ならびに左半分を成す浮彫石板について分析を行った。アシュモリアン美術館では、前回訪問時に特別展に貸し出されていてアクセスできなかった浮彫について非破壊分析を行なった他、浮彫9点からサンプル採取を行った。バーミンガム博物館では、倉庫に置かれた浮彫とギャラリーに置かれた浮彫について非破壊分析を行った。調査後、各関係機関へすべてのデータを提供した。③大英博物館収蔵浮彫のライオン狩り浮彫について、美術史・文献学的研究をミュンヘン大学ならびにウィーン大学研究者と共同で行い、国際学会等で発表した(7月:渡辺・ノヴォトニー・ゼルツ)。古代メソポタミアに少なくとも異なる2種類のライオンが生息していたことが明らかになった。④研究会を開催して今後の研究について意見交換した(12月)。
1: 当初の計画以上に進展している
調査許可取得が極めて困難な大英博物館において多数の浮彫調査を行うことができ、またアシュモリアン美術館では試料採取が実現したため。
これまでに行った調査では、ニネヴェ出土の浮彫について十分な量の調査ができたが、ニムルド出土浮彫のデータがまだ少ないため、今後はニムルド浮彫の調査を中心に進め、石材の違いを明らかにする。ニネヴェ南西宮殿第33室出土浮彫の微化石を含む石材について、推定される原産地であるトルコ南東部の石切場から岩石試料を入手できるよう、多方面に働きかける予定である。浮彫の美術史・文献学的研究については、引き続きニネヴェ北宮殿出土浮彫の国際共同研究に挑む。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
Prince of the Orient: Ancient Near Eastern Studies in Memory of H. I. H. Prince Takahito Mikasa, Orient, Supplementary volume 1,
巻: Special Issue ページ: 31-45