研究課題
(1)インドラマユの結果について ClとBr比の結果から,海水の侵入による地下水の塩水化が進行していることが示唆された。海水の地下水への混合率を評価した結果,最大で約62%であった。次に,その混合率を用いて海水の影響を受けている地下水のSO4濃度を計算し実測値と比較することで,人為的なSO4の負荷もしくは硫酸還元反応による減少過程を推定した。その結果,地下水のDOC,FeやMn濃度とは関係がなく,井戸の深度が20m以深で硫酸還元反応が進行することが示唆された。(2)マタラムの結果について Si濃度は22.0~52.0mg/Lの範囲で,非晶質SiO2の飽和指数は-0.40~-0.03の範囲に入った。Ca濃度は5.0~60.0mg/Lの範囲で,カルサイトの飽和指数は-2.54~0.32の範囲に入り,過飽和の試料も認められ一部の地下水ではスケール障害起きる可能性が考えられた。カルサイトの飽和指数は,pHとは関係がなくある一定の深度以上で平衡状態に収束する傾向が認められた。Fe濃度は最大で2.16mg/Lで,定量下限値(0.005mg/L)以下の試料は26試料中11試料あった。また,Fe濃度は酸化的なNO3濃度とは双曲線的な関係がみられ,Mn濃度と同様に2価が主成分であることが示唆された。地下水は相対的に還元な状況下であり,地下水利用にあたってはFe2+が酸化されスケールが生成される可能性がある。(3)人口200万人の沿岸都市セマランでも採水を行った。計30地点である。(4)マタラム(ロンボク島)では、大地震のため大きな被害を受けたが、地下水位のモニター用に設置していた機器及び観測井は無事で、そのまま継続してモニターを行っている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定どおりカウンターパートのインドネシア科学院との間でMOUを締結し、より円滑な共同研究が可能になった。結果として、日本側の訪問時以外にも現地情報の取集なども可能になった。あわせて、現地スタッフの一人が代表者の研究科に博士課程の留学生として昨年4月から入学し研究しており、分析や解析が一層進展した。ただし、調査地の一つであり、自記水位計を設置していたロンボク島では大地震のため大きな被害を受けるというアクシデントに見舞われた。現地スタッフには被災直後1か月で現地入りしてもらい、機器や観測井の無事を確認してもらったが、予定外の出費となった。想定外の目的を加えつつ、モニタリングは継続している。結果としては、研究はおおむね順調に進行している。
(1)①各3都市(インドラマユ、マタラム、スマラン)での現地調査、②情報収集については2年目で終了予定であったが、2年間の調査によって雨季乾季の違いを検証する必要性、および昨年発生したロンボク島で大地震の影響調査の必要性、さらにインドネシア科学院でワークショップを開催し成果の議論を行う必要性などを考慮し、今年も現地調査を実施することにした。③インドラマユ市において雨季のデータを採取する。これは雨季に地下水位が上昇した際の影響を確認するものである。④昨年8月に大地震のあったロンボク島マタラムには地下水位計測用のロガーを設置しており、これを回収に行く際に、その地点のみ地下水の採水を行う。地震の影響についても考慮する。(2)①地下水脆弱性に対する人間活動の影響を評価するため、都市流域GIS準分布型水・土砂・物質輸送モデル(SWAT)に都市経済物質負荷モデルを連結させる。現状SWATモデル解析は完成しており、最終的には窒素収支を中心に評価していく。②地下水汚染の脆弱性に対する自然要因の影響を評価するために、これまで収集した地下水水質情報をもとに地球化学モデル(GWB)による解析を進める。③追加的な解析として、既存のボーリングコアを収集し、その抽出実験を行い、塩水化にともなう物質溶出影響についても評価する。(3)①上記の結果を集約し①地下水脆弱性の定量的な評価を行う。各都市における汚染物質負荷制御および許容揚水量等について推定を行う。また、②地下水脆弱性の指標及びその要因についても主に地質、地形等によって普遍化する。
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International Journal of GEOMATE
巻: 17 ページ: 70-75
doi.org/10.21660/2019.60.4756
巻: 16 ページ: 153-158
doi.org/10.21660/2019.56.4742