研究課題/領域番号 |
17H04497
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
日比野 陽 広島大学, 工学研究科, 准教授 (50456703)
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研究分担者 |
眞田 靖士 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80334358)
三浦 弘之 広島大学, 工学研究科, 准教授 (30418678)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミャンマー / バガン / 地震被害 / 常時微動 / 補強工法 / 損傷レベル / 固有周期 |
研究実績の概要 |
平成29年度は2016年ミャンマー地震による被害が多く確認されたミャンマーのバガン市で被害を受けた仏教遺跡群の調査を主として行った。ミャンマー地震で被害を受けた建物の損傷状況や補強状況の調査,常時微動の計測,3Dスキャンを用いた建物の形状調査,地盤の常時微動計測や現地のレンガの材料特性の把握のための要素実験を実施した。調査と実験から次の知見を得た。 1) 寺院形の建物の場合,建物の高さが大きくなるにつれ固有周期が長くなり,建物高さと固有周期に比例関係が見られた。ステューパ形の建物の場合も同様であったが,一定の高さ以上の場合に比例関係が見られなかった。2) 損傷のレベルが大きい建物の固有周期は地震波の卓越周期と概ね一致し,固有周期と損傷レベルの間に相関が見られた。3) 補強前後の固有周期を比較したところ,補強後の建物で固有周期が短かった。しかしながら,補強による顕著な固有周期の変化(耐震性能の向上)は見られなかった。4) 3Dスキャンによる実測結果を用いて作成した解析モデルに材料特性値を与え固有値解析を行った結果,解析結果の固有周期は常時微動計測による実測値と概ね一致した。5) 微動H/Vスペクトル比を用いて地盤モデルを推定し,2016年ミャンマー地震の地震動の推定,最大加速度の分布の推定を行い,建物の被害レベルの分布図との比較を行った。しかしながら,地震の最大加速度と被害レベルの間において明瞭な関係性は見られなかった。 以上の結果から,本研究ではミャンマーの文化財建築物の基本的な構造特性や地盤の特徴を把握し,ミャンマーの建物に対する耐震補強工法の適用とその方向性の決定に繋がる有益な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りの調査が実施できており順調に研究が進展している。調査や実験においても期待した成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画に沿って研究を実施する予定である。平成30年度は平成29年度に実施したバガンの寺院の構造性能を解析的に明らかにするとともに,ミャンマー都市部の建物の耐震性能および地盤特性を主として調査する。バガンと同様に都市部においても微動計測や建物の構造性能調査を実施し,ミャンマーの建物の基本的な耐震性能や耐震補強の必要性を明らかにすることを目的とする。さらに,建物の微動計測に加え,加速度計等を用いて建物の地震時の応答を把握することも検討する。
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