研究課題/領域番号 |
17H04498
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森 伸一郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (10304643)
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研究分担者 |
山本 英和 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00250639)
N.P Bhandary 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (10363251)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カトマンズ盆地 / ネパール・ゴルカ地震 / 地震動増幅 / 被害集中域 / 建物被害 / 微動アレイ探査 / 表面波探査 / 軟弱地盤 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2015年4月25日、マグニチュード7.8のネパール・ゴルカ地震で大きな長周期地震動と小さな短周期地震動が観測されたカトマンズ盆地における観測地震動の周期別に大きく異なる原因を究明することにある。被害集中域とその周辺地域の建物被害と地盤振動特性の関係に着目して調査する。 2017年度、盆地内広範囲の地盤微動(300地点)により、盆地内卓越周期マップを作成し、建物被害が集中した地域とそれ以外の地域に分けた。代表的な複数区域(Khusibu、Gongabu、Sankhu)で追補的な微動観測、半径0.6mのアレイ微動探査、新たに表面波探査の結果を用いて地盤構造を推定した。20m以浅では、アレイ探査、表面波探査の結果が良く一致した。一方で、特に30mないし40mの深さでは精度が不十分であった。 そこで、初期計画にあった20mのPS検層を目的としたボーリングの実施を取りやめて、より深い構造を把握することを目的にしたアレイ微動探査を実施することとして、KhusibuとGongabuの2地区で、半径5mのアレイ微動探査を実施した。また、被害集中域の隣接地区でも単点微動観測を追加した。Khusibu地区については、集中したRC造建物被害は表層地盤の増幅特性を代表する0.5~1.5秒の卓越周期の違いや表層20m以浅のVsの小さい軟弱な層の厚さで説明できる可能性があることがわかった。Khusibu地区では、被害集中域とその境界地点の2箇所で長期間の微動観測データが得られ、岩手で適用性を確認した地震波干渉法を適用して、その結果が得られた。Gongabu地区については、現時点では、地盤の卓越周期分布やアレイ探査より判明した地盤の構造には、被害集中地域とその周辺で、単純で明瞭な違いは見られていない。被害の地域集中度は明瞭ではないため、もう少し広域に調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固有周期分布図の作成、被害集中域・隣接分散域の対象地域の選定、対象選定地域(2地域:KhusibuとGongabu)での表面波探査、微動アレイ観測、地震波干渉法の実施と地盤の速度構造のモデル化などは順調である。2018年度は、予定していたボーリングとPS検層は前年の2種の物理探査が予想以上に良好であったことと予算の関係から深さ20mまでしか望めないが2種の物理探査で不要となり、その分、アレイ半径を大きくした微動アレイ探査の再実施と単点微動観測の追加に変更して、結論を導くのに大変有効であった。地震波干渉法の適用性も確認できたし、地震被害本震と余震の記録の整理は準備を整えた。したがって、主な実施項目は概ね計画通りに進んだ。
一方、ネパール側からの建物被害統計情報の入手、震度調査の結果入手については、懸念通り入手できていない。予想していたことなので、次善の策としての自ら地震発生年に実施した建物被害調査結果の生データやインタビュー震度調査結果などをまとめて被害分布、震度分布図の作成に着手した。
これらを考慮して、総じて順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎えて、建物被害と地盤構造・地盤物性との関係を明らかにするために、KhusibuとGongabuに加えて、本震の観測されたDMGで実施したアレイ観測データの分析と地震直後に実施した周辺建物被害調査の集計結果の分析を行い、長周期成分の卓越する地域での建物被害と振動特性や地盤構造との関係を明らかにすることを実施する。そのために、最終年度の現地調査について焦点をしぼるために、事前の打ち合わせ会議を5月中に実施するとともに、成果の検討・議論などは学会などを利用して実施していきたい。
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