研究課題/領域番号 |
17H04506
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00322347)
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研究分担者 |
阪本 拓人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40456182)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サハラ以南アフリカ / 人口増加 / 内戦・テロ / シミュレーション / 紛争解決 |
研究実績の概要 |
西アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル帯では人口が急増しており、1人あたりの農地面積の縮小による飢餓、貧困が慢性化し、毎年、雨季になると各地で農耕民と牧畜民(フルベ、トゥアレグ)が放牧地をめぐって紛争を繰り返し、近年では死者も出て激化している。本研究は、現地データのシミュレーションによって人口増加や土地利用、紛争がどのように発生するのか将来予測をおこない、どのような方策によって紛争の発生を緩和することができるのかを検証することを目的としている。研究代表者の大山と分担者の阪本は9月にニジェールへ渡航し、武力衝突がもっとも発生しやすい現地状況を観察した。阪本は紛争シミュレーションに必要なデータを本格的に取得するまえに、牧畜民と農耕民のコミュニティに住み込み、生活実感を得ることを第一の目的とした。大山は、これまでに継続してきた、都市の有機性ゴミによる緑地化がどのように進行しているのか、30サイトの植物を観察し、そこを管理する牧畜民にインタビューを実施し、緑地化がもたらす家畜飼養の負担軽減と家畜の肥育、紛争予防への貢献について調査した。阪本はケニア北部の牧畜社会における家畜移動に関する英語論文、計算科学の分野に関する論文・発表をおこなうなど、成果を着実に出している。大山は、チャド湖周辺で発生するボコハラムのテロに関する論考をまとめて発表し、その被害と発生する原因を考察し、今後の紛争緩和につなげるべく、本研究計画の展開と方向性を検討している。また、ニジェールだけではなく、紛争国に囲まれているウガンダ、土地問題の発生しているザンビアにおいても、引き続き、調査を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
西アフリカ・サヘル地域ではテロの発生により十分な現地調査はできていないが、ニジェール政府関係省庁、国際協力機関、国連機関との連携をすすめ、国際的な協業・連携の枠組みを構築している。安全に留意しながら現地調査をすすめつつ、これまでに蓄積した研究代表者の研究データをまとめ、分析・記述することで、研究成果をあげることができている。国内・国際学会、シンポジウムでの発表、公開講演会での講演、論文の刊行、新聞やテレビを通じた成果発信をすすめ、研究ネットワークをひろげ、順調に研究をすすめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
紛争シミュレーションに必要な人口増加や土地利用の変化については、細密かつ膨大なデータを必要とし、現地調査において多くの作業が必要となる。そのため、2018年度には桐越仁美さん(東京外国語大学)に分担者として、現地データの取得やシミュレーションの構築にむけた討論に参画してもらうことにしている。サヘル地域では、隣国のマリやブルキナファソではテロの発生による治安の悪化がみられる。そのため、外務省、およびJICA現地事務所、京都大学の安全指針にもとづき、現地スタッフの活用による現地調査の継続、あるいは首都近郊に研究サイトを設けている。ニジェール国環境省および、ニアメ市、ドゴンドッチ市の許可を取得し、現地調査を継続する。サヘルの現状を鑑みると、将来予測とそれにもとづく方策の立案・実施により治安状況の悪化を緩和させるという本研究計画はたいへん意義ぶかいと考えているが、治安の悪化には十分に注意し、研究をすすめていくつもりである。
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