研究課題/領域番号 |
17H04510
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
見市 建 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 准教授 (10457749)
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研究分担者 |
伊賀 司 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 特別研究員(PD) (00608185)
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (10330010)
木場 紗綾 同志社大学, 政策学部, 助教 (20599344)
外山 文子 (坂野) 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 特別研究員(PD) (50748118)
中西 嘉宏 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (80452366)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
瀬戸 裕之 新潟国際情報大学, 国際学部, 准教授 (90511220)
茅根 由佳 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (70772804)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 東南アジア / アカウンタビリティ / ポピュリズム / 民主化 / 権威主義 |
研究実績の概要 |
東南アジアにおけるアカウンタビリティ改革導入とポピュリズム政治家の台頭について、各国の事例を踏まえてそれぞれの傾向と要因の比較検討を行った。国際的アカウンタビリティについては、ミャンマーのロヒンギャ問題への圧力の高まりや軍民協力の推進、マレーシアにおける国際報道による政権のスキャンダルの暴露などを挙げることができる。水平的アカウンタビリティについてはラオスのような選挙のない社会主義国を含め、各国で憲法裁判所やや汚職対策機関、選挙管理委員会の導入がみられる。ラオスでは地方人民議会も設置された。ソーシャルネットワークの一般化は、各国でメディアやNGOによる社会的アカウンタビリティがより機能しやすい状況を生み出している。マレーシアのブルシ運動がその好例。選挙はシンガポールやマレーシアのような半民主主義国でも体制への圧力となっている。社会的アカウンタビリティが停滞するミャンマーでも、若手の与党NLD議員による社会へのアウトリーチ活動がみられる。 他方、アカウンタビリティ制度の導入は、既存権力の維持を目的としているケースもある。ラオスの地方人民議会は結局国会議員が兼任し、インドネシアやタイの国軍改革はむしろそれぞれの軍の権益を温存しているとの指摘もある。マレーシアは選挙以外のアカウンタビリティを制限することで体制を維持している。タイでは憲法裁判所が民主的に選ばれた政権を打倒するに至っている。 選挙ポピュリズムは、フィリピンの対麻薬戦争や、インドネシアの華人キリスト教徒ジャカルタ州知事への宗教冒涜罪適用といった人権問題の一因ともいえる。インドネシアでは現体制への支持不支持をめぐってソーシャルメディアが社会的分断を促進している。 こうしたアカウンタビリティの「負の側面」にこそ、地域政治の特徴を捉える契機がある、というのがここまでの結論である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれの分担者が当該地域で蓄積してきた研究と継続性があり、調査は順調である。最終年度に向けて、研究プロジェクトとしての総括と成果報告の仕方を明確にすることが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ソーシャルメディアを用いた社会的アカウンタビリティの展開、(2)マレーシア、インドネシア、タイにおける選挙と体制転換の是非の分析など、事例のアップデートを引き続き行う。同時に、東南アジアにおける「応答性の政治」をめぐる力学を分析する枠組みを提示する。地域全体の傾向を一元的に把握するよりは、効果的な比較対象の組み合わせが鍵となってくるだろう。
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