研究課題/領域番号 |
17H04514
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
権 香淑 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00626484)
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研究分担者 |
趙 貴花 名古屋商科大学, 商学部, 講師 (00624850)
宮島 美花 香川大学, 経済学部, 教授 (70329051)
鄭 亨奎 日本大学, 経済学部, 教授 (80253045)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 元日本留学生 / 中国朝鮮族 / 移動 / トランスナショナル / 越境的な社会空間 |
研究実績の概要 |
初年度に続き、2018年度も三つの時期区分に沿いつつ、各分担者が調査を進めた。草創期の調査では、中国の青島、済南、煙台、長春、延吉等を訪れ、従来の取材に加え、特に「大平班」の研修生を手がかりに、初期の元留学生を取材した。その多くは一ヶ月の「日本研修」(1981年3月)後、再度留学生、訪問学者等として訪日していたことが明らかになった。青島濱海大学、済南大学、魯東大学、延辺大学、吉林外国語大学等の関係者と日本留学、日本語教育に関してディスカッションを行った。確立期の調査では、東京と延吉において聞き取り調査を行い、初年度の調査協力者にもコンタクトを取り、補足調査を行った。発展期の調査では、東京と中国のハルビンにおいてフィールドワークを行った。東京では3回、大阪では1回、上海とハルビンでそれぞれ1回の現地調査を行った。これらの調査を通して、計10名の元日本留学生の朝鮮族の日本留学の経緯、日本での勉学と仕事、留学を終えたあとの移動、そして日本・中国間を移動する朝鮮族の子どもの転校の実態を調査した。以上を踏まえ、関連する団体と国際シンポジウムを企画し、中間報告を行った。 また、研究協力者との共同作業のもと、これまでの調査内容や文献を整理したうえで、元日本留学生の軌跡を辿る研究を進めるための土台を整える作業も行った。それぞれの時期区分の年代を、調査を通して把握した事実関係に基づき、草創期(1979-1986)、確立期(1987-2000)、発展期(2001-現在)と改めて定義し、これを共著論文として発表した。 さらに、今年度は、日本の文科省留学生として1980年代後半に来日された元留学生の講演会を企画・実施した。講演内容そのものが当事者のオーラルヒストリーであり貴重な証言であることから、現在、事実関係の整理と分析を進めている。これまでの調査事例に加え、より豊かな知見の蓄積が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究実績を踏まえ、2018年度も当初の役割分担に従い、それぞれ調査を進めた。その結果、旧満州時代の日本語教育との関連および文化大革命後の朝鮮族社会における日本語教育、次世代の教育環境を含む補足調査、子供の教育に関する現状について調べ、さらに多くの事例にあたり研究を進めることができた。また、関連学会との共催で中間報告の場(朝鮮族研究学会2018年度全国大会特別セッション「中国朝鮮族の移動研究をめぐる視点の多様化と深化」)を設け、元日本留学生の状況に関する傾向、特徴などを把握することに努めたことで、全体的な研究の進捗状況と今後の課題をより明確にすることができた。なお、元留学生たちによる次世代教育の実践や実態把握についての量的調査は、対象や時期などの適切性を見極めるために実施を見送り、今後の課題としている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2019年度は、各時期別の調査研究を継続するとともに、包括的な成果としてまとめることを目指す。引き続き80年代初期に日本に留学した元留学生の聞き取り、旧満州時代の日本語教育との関連や、文化大革命後の朝鮮族社会における日本語教育について調査するほか、これまで行ってきた日中韓の対象地域における重点的調査を行う。草創期、確立期、発展期の時代区分別に行ってきたインタビュー調査と並行して、関連資料を収集するとともに、その整理と分析にあたる。とりわけ、事例の時代別、世代別の比較考察はもちろん、日本との関わりなかで指摘されてきた朝鮮族の文化資本をめぐる論究課題にも集中的に取り組み、研究成果の公開に向けて備える。
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