研究課題/領域番号 |
17H04525
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
佐々木 愛 島根大学, 法文学部, 教授 (00362905)
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研究分担者 |
大澤 正昭 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (30113187)
石川 重雄 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (50636678)
戸田 裕司 常葉大学, 外国語学部, 教授 (10242794)
小川 快之 国士舘大学, 文学部, 特別任用教授 (10400798)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東洋史 |
研究実績の概要 |
本研究助成によって実施した海外調査について以下の報告書3点を公刊した。研究業績はこの3点に集約されている。 ①「福建南部・内陸部歴史調査報告 : 『清明集』的世界の地理的環境と文化的背景〈ショウ州・順昌篇」『上智史学』62号 ②「江西省歴史調査報告―宋代古墓を中心として(吉安・撫州篇)―」『社会文化論集』14号 ③「浙江省歴史調査報告―宋代古墓を中心として(武義・天台山・寧波篇―」『東京大学経済学部資料室年報』8号 この3編の報告書を通して明らかにすることができたのは、少なくとも福建・江西・浙江の各調査地においては、夫婦合葬墓はかなりまれで、個々人の単葬墓が基本となっており、累世同居の大家族であっても、あるいは宰相を輩出した名族であっても、一族墓地が形成されているわけではないということ、さらには墓葬においては夫婦ではなく母子関係が強調される例もしばしばみうけられるということであった。これらの事象は、斯界の名著である滋賀秀三『中国家族法の原理』とは相反する事象である。また、福建省において、現地での族長への聞き取りで、未婚の女子死亡者については墓を作らないという『中国家族法の原理』に書かれた通りの習慣があることが分かったが、しかし当該の一族は、清朝道光年間には未婚女子の墓を作っていることを族譜から確認することができた。すなわち、滋賀秀三『中国家族法の原理』は、地域的、歴史的に変化変容しているものとして認識すべきであるという視座を獲得することが出来た。また、墓の保存という面からの歴史認識の問題についても、大規模な整備事業をまさにこれから開始するという墓を調査し、子孫や地方政府から話を聞くことが出来、有益であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた現地調査を江西省で9月に実施したほか、他の研究資金とも組み合わせることにより、補充調査を12月に浙江省において実施し、年度内に現地調査報告書を三本発表することができた。調査を通して、斯界の名著である滋賀秀三『中国家族法の原理』とは相反する事象が宋代当時の中国南方では広がっていることを確認できた、このことは中国家族史研究に対して与える影響は大きいものと予想される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、福建・江西等中国南方の諸地域における宋代古墓調査を実施し、調査報告を執筆発表する予定である。
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