研究課題/領域番号 |
17H04532
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鶴見 英成 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (00529068)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペルー / アンデス文明 / モスキート平原 / 神殿 / 形成期 / 定住 / 地域間交流 / 先土器 |
研究実績の概要 |
アンデス文明の形成過程の始まりは神殿の登場にあるとされ、とくに土器の導入に先立つ「先土器神殿」の重要性が指摘されているが、その編年研究が遅れている点、「神殿が成立する要件」が実証的に説明されていない点が分野における課題である。応募者は平成28年度までに、ペルー北部のモスキート遺跡の発掘から、先土器神殿の至近で灌漑農耕が行われていた証拠を得た。そして「神殿間の遠隔地交易を荷駄獣リャマが支える」「リャマが肥料をもたらす」「耕作地からの除石が神殿の建材になる」という相互関係に着目し、文明形成の画期たる「農村としての神殿」の具体像を解明するべく本研究を計画した。同じく代表者をつとめる「ワヌコ盆地の古代と現代:アンデス文明形成期の神殿遺跡と地域社会」(課題番号17H05110)によって、ペルー中部山地ワヌコ盆地にて先土器期に始まる神殿遺跡群を調査しており、双方を比較する視点から成果を発表してきた。また東京大学総合研究博物館放射性炭素年代測定室と連携し、アンデス文明の遺物・遺構の編年の精緻化を進めた。 平成29年度は11月にモスキート平原にてボーリング調査を実施した。これまでに検出した水路は、全ての区間が明確に確認できたわけではない。後世の降雨で分断された箇所はやむを得ないが、堆積で深く埋もれてしまった箇所は発掘さえすれば検出が期待できる。ただし発掘は効率が悪いため、手動ボーリング器による地下の水成層の検出を試行し、成功した。トータルステーションを用いてボーリング地点をと頭上に落とし、水路の形状が判明した。地形に応じて分岐して平原のあちこちへ水を供給しており、また大きな自然岩の狭い隙間を流路に組み込んで水門を設け、流路を調整したことがわかった。また平成27年度までに発掘した炭化物サンプルを見直し、神殿の編年を決定するのに必要なサンプルを年代測定し、またワヌコ盆地の試料との比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発掘せずに流路を推定するという手法は成功し、今後もモスキート平原の各所で実施可能である。当初の予定では土壌からサンプルを採取する考えであったが、きわめて堅い土質のため取り出しにあたって層位が保てないことが分かり、サンプル採取には不向きであることを確認した。そのためむしろ平成31年度に予定している発掘調査において体系的にサンプリングを実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度のボーリング調査では、モスキート平原の東半分を主たる対象として、地下に埋もれた灌漑用水路の流路を特定することに成功したが、同様にモスキート平原西側で部分的に確認済みの用水路についても、流路の全体像を把握するべく調査する。またラマダ平原については部分的にしか地図が作製されていないが、モスキート遺跡に見られる大型の公共祭祀建造物が複数地点で確認されており、それらを平成31年度に発掘するための準備として測量する。 8月にモスキート平原・ラマダ平原の測量とボーイング調査を2週間実施する。また31年に過去の調査によって得られたモスキート遺跡の獣骨などの遺物を約1ヶ月間分析する。
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