中央ユーラシア高地民・低地民の相互交流と騎馬遊牧社会の成立基盤に関する考古学研究

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H04533
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 久米 正吾 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 特任助教 (30550777)
• 研究分担者: 宮田 佳樹 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (70413896) ; 早川 裕弌 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70549443) ; 藤澤 明 帝京大学, 付置研究所, 准教授 (70720960) ; 覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 助教 (70749530) ; 新井 才二 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (40815099) ; 山口 雄治 岡山大学, 埋蔵文化財調査研究センター, 助教 (00632796) ; 辰巳 祐樹 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (50824398) ; 久保田 慎二 熊本大学, 国際人文社会科学研究センター, 准教授 (00609901)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 考古学 / 中央アジア / 青銅器時代 / 農耕牧畜 / 集団

研究実績の概要

新型コロナウイルス拡大の影響でフィールド調査の延期を余儀なくされたため、本研究課題を令和3年度末までの1年間延長し、以下の調査を実施した。
（1）フィールド調査：令和4年2月、ウズベキスタン、ダルヴェルジン遺跡の北西地区で新たな発掘区を設け、遺跡編年確立のための調査を実施した。その結果、表土から地山礫層に至る連続した文化層が確認され、当該地区の編年整備のための基礎的データが整った。また、集落外縁の家畜放牧地と解釈できる東地区の再発掘を実施し、家畜由来物質の含有を実証するための土壌サンプリングを行った。これらの新たな課題や資料の研究は、本課題の次のフェーズで進める予定である。
（2）標本研究：令和1年度までに輸送した動物骨と人骨の安定同位体及び古代DNA分析、土器試料の脂質分析を進めた。その結果、低地のダルヴェルジン遺跡では食料ならびに飼料として雑穀の高頻度の消費が認められた。この成果は植物遺存体の同定成果とも整合的である。高頻度の雑穀消費はキルギスの高地遺跡等では認められておらず、両者で初期農耕の導入プロセスが異なっていたことを示している。また、キルギス出土人骨の古代DNA分析により高地への初期農耕牧畜民の移入状況に関する実証的な証拠を得た。
（3）遺跡研究：特に進捗があったのは数理地理解析と連携したキルギス、天山山脈域での農耕牧畜を伴う環境開発のプロセスである。すなわち、移牧の開始に伴う高山草原帯の開発が仮説として得られた。
（4）成果の公表：オンラインでの学会や研究会を中心として、迅速に成果を国内外に公表した。また、キルギスでの調査成果を主とした天山山脈での初期農耕牧畜の導入と移牧の起源に関する論考を執筆し、令和4年度に出版されることが決定している。なお、市民講座や講演会等の枠組みを活用して、本研究課題による最新の研究成果を広く社会に向けて発信した。

現在までの達成度 (段落)

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [国際共同研究] 中央アジア・アメリカ大学(キルギス)
  • 国名: キルギス
  • 外国機関名: 中央アジア・アメリカ大学
• [国際共同研究] ウズベキスタン科学アカデミー考古学調査研究所(ウズベキスタン)
  • 国名: ウズベキスタン
  • 外国機関名: ウズベキスタン科学アカデミー考古学調査研究所
• [国際共同研究] ヴィリニュス大学(リトアニア)
  • 国名: リトアニア
  • 外国機関名: ヴィリニュス大学
• [雑誌論文] 河姆渡文化と粥 (2020)
  • 著者名/発表者名: 久保田慎二、小林正史
  • 雑誌名: 河姆渡と良渚ー中国稲作文明の起源ー 巻: - ページ: 101-110
• [雑誌論文] Three-dimensional point cloud data by terrestrial laser scanning for conservation of an artificial cave (2020)
  • 著者名/発表者名: Hayakawa, Y.S., Ogura, T., Tamura, Y., Oguchi, C.T., Shimizu, K.
  • 雑誌名: Journal of Speleology in Artificial Cavities (Damage assessment and conservation of underground spaces as valuable resources for human activities in Italy and Japan, Opera Ipogea) 巻: Numero Speciale ページ: 67-74
  • 査読あり
• [学会発表] ウズベキスタン、フェルガナ盆地の初期農耕牧畜村落（1500-1000BC）での家畜飼養ー2020-2021年度のダルヴェルジン遺跡出土標本の分析成果概要ー (2022)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 第6回中央アジア牧畜社会動態研究 研究大会「牧畜社会の近年の変化」
• [学会発表] 中央アジア東部への初期農耕牧畜の拡散―天山山脈とフェルガナ盆地での調査から― (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 金沢大学古代文明・文化資源学研究センターキックオフシンポジウム「古代文明の学際研究と文化資源学」
• [学会発表] 「原シルクロードの形成」研究に向けて―キルギスとウズベキスタンの初期農耕牧畜民遺跡での発掘調査成果と今後の課題― (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 金沢大学古代文明・文化資源学研究センター定例研究会
• [学会発表] 中央アジア初期農耕牧畜民の交流から東西交渉の始まりを探る―キルギス、モル・ブラク1遺跡(第1~3次)、ウズベキスタン、ダルヴェルジン遺跡(第1~2次)の発掘調査(2016-2019)― (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾、ヒクマトゥッラ・ホシモフ、アイダ・アブディカノワ、ボキジョン・マトババエフ
  • 学会等名: 日本西アジア考古学会第28回西アジア発掘調査報告会
• [学会発表] Early pastoral adaptations in the Central Tien-Shan of Kyrgyzstan and the Fergana Valley of Uzbekistan in the Bronze Age (2021)
  • 著者名/発表者名: Kume, S., Gakuhari, T., Arai, S., Motuzaite Matuzeviciute, G., Miyata, Y., Hoshimov, H., Abdykanova, A., Matbabaev, B.
  • 学会等名: Beyond being a pastoralist in Central Asia “Margins or Nodes” concluding online conference
  • 国際学会
• [学会発表] 中央アジア東部山岳地帯への農耕牧畜の波及―その背景を文化と環境の両面から考える― (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 令和2年度奈良文化財研究所第5回国際遺跡研究セミナー
  • 招待講演
• [学会発表] 東は東、西は西?―ユーラシア東西文化の出会いをめぐる考古学― (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 日本西アジア考古学会第5回西アジア考古学トップランナーズセミナー
  • 招待講演
• [学会発表] ダルヴェルジン遺跡出土土器の脂質分析ーフェルガナ地域での初期雑穀農耕ー (2021)
  • 著者名/発表者名: 宮田佳樹、久米正吾、宮内信雄、吉田邦夫、堀内晶子、ヒクマトゥッラ・ホシモフ、ボキジョン・マトババエフ
  • 学会等名: 日本西アジア考古学会第26回総会・大会
• [学会発表] Applications of terrestrial laser scanning and structure-from-motion photogrammetry for geomorphological change detections and recognition (2021)
  • 著者名/発表者名: Hayakawa, Y.S.
  • 学会等名: IAG Webinar East & Southeast Asia, International Geomorphology Week 2021
  • 国際学会
• [学会発表] ユーラシア草原地帯への農耕の拡散について―山岳地帯との比較から― (2020)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 草原考古研究会2020年12月例会
• [学会発表] 文献解題:Ecosystem Engineering Among Ancient Pastoralists in Northern Central Asia (2020)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 学会等名: 第4回中央アジア牧畜社会動態研究 研究大会「環境変化が与える牧畜社会へのインパクト―歴史生態学的視点から―」
• [学会発表] 中国新石器時代長江下流域における土器利用の変遷―土器使用痕分析と残存脂質分析を中心に― (2020)
  • 著者名/発表者名: 久保田慎二、小林正史、宮田佳樹
  • 学会等名: 日本考古学協会第86回（2020年度）総会
• [図書] 「中央アジア東部の初期農耕牧畜民遺跡から出土した動植物遺体と人骨の自然科学分析」今村薫（編）『中央アジア牧畜社会研究叢書3 自然適応と牧畜』1-3頁 (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 総ページ数: 87
  • 出版者: 名古屋学院大学現代社会学部文化人類学研究室
• [図書] 「ダルヴェルジン」駐日ウズベキスタン共和国大使館（編）『ウズベキスタン シルクロード遺跡の旅』14-15頁 (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 総ページ数: 16
  • 出版者: 駐日ウズベキスタン共和国大使館、ウズベキスタン共和国観光・スポーツ省
• [図書] 「東は東、西は西？－ユーラシア東西文化の出会いをめぐる考古学－」古代オリエント博物館（編）『ORIENTE』63号 13-16頁 (2021)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾
  • 総ページ数: 32
  • 出版者: 古代オリエント博物館
• [図書] Dalvarzin hillfort and issues of formation of the early town of Fergana Valley in the Uzbekistan and Central Asia in the Bronze Age. In: F. Maksudov et al. (eds.), Uzbekistan and Central Asia in the System of World Civilization. pp. 35-36 (in Russian). (2020)
  • 著者名/発表者名: Matbabayev, B., Xikmatillo, X., and Kume, S.
  • 総ページ数: 207
  • 出版者: Academy of Sciences of the Republic of Uzbekistan, National Center of Archaeology, Institute of Archaeology of Samarkand
  • ISBN: 9789943550575
• [図書] 「キルギス、天山山中の移牧民遺跡の考古学調査2」今村薫（編）『中央アジア牧畜社会研究叢書2 遊牧と定住化』93-102頁 (2020)
  • 著者名/発表者名: 久米正吾、アイダ・アブディカノワ
  • 総ページ数: 119
  • 出版者: 名古屋学院大学現代社会学部文化人類学研究室