研究課題
本研究は、コーカサス地方最古の農村遺跡から出土した初期家畜の骨資料などを用い、コーカサス最古の家畜の由来と飼育行動を明らかにすることが目的である。遺跡から出土した骨の種同定を確実にするために、形態観察のほかにタンパク質化学の分析を行った。今年度も分析数を増やし、ヤギとヒツジの区別を行った(分担者の中沢隆が担当)。骨の形態による種同定ができた標本については、形態とタンパク質のあいだでほぼ一致した種同定であった。この結果は、残存状態が悪い骨で形態による種同定が難しい標本に対するタンパク質分析の種同定結果の信頼性を高めるものである。この研究は、奈良女子大学と名古屋大学の学部・大学院教育の一環としても行った。古代DNA解析は高橋遼平(分担者)が担当し、標本数の多いヤギとヒツジに焦点をあててミトコンドリアDNAの増幅を行った。ヤギの系統解析は以前の結果とおよそ矛盾しない結果が得られ、コーカサスの初期家畜ヤギが外来であることを示すデータが補強された。家畜の飼育行動に関する分析では、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタの歯エナメル質の酸素・炭素安定同位体分析をさらに進めた。アゼルバイジャンでの現地調査では現生ヒツジのサンプルを採取し、遺跡近郊の低地での飼育の参照となる同位体変動パターンを追加で得ることができた。この研究成果をとりまとめ、国際学術誌に投稿した。またこの研究を通して、名古屋大学大学院博士後期課程の教育を行った。また今年度はコーカサス最古の農村遺跡であるハッジ・エラムハンルテペにおける石器の空間分布を解析し、初期農村における場の利用や空間メンテナンスに関する推定を行った。その結果、活動場のメンテナンスが次第に発達する可能性が認められた。遺跡の空間構造は家畜囲いにも関連していたと考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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植生史研究
巻: 28-2 ページ: 59-70
ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明
巻: 4 ページ: 40-44